策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

よちよち漢語 十二 需要愛先生 「思為双飛燕」

 孫策は父に従って遠征に行く二日前、彼のあちこちからの友達が見送りに来た。孫策は酒を勧めて、機嫌をよくした余り、孫権を捕まえて皆に言った。
「オレのこの弟は生まれつき人よりすぐれて弁舌さわやかだ。オレが言うことではないが、君たちの何人かはいいすぎだと思うだろうが、この兄の大変自慢である。ハハハハ!」
 孫権孫策の懐でいやいやと動いた。
「お兄ちゃん!」
 孫策は笑いながら彼を放した。
 孫権は逃げようと這い出したが、しばし考えて、畏まって座った。
 孫権は呉夫人の言いつけを思い出したのである。
『あなたもお客さんとつきあい、おもてなしをしなさい』
 右側の筆頭に周瑜が黙って酒を飲んでいた。
 孫策はちらりと見てから、おもむろに笑って言った。
「あと二日でオレは遠征に行くが、君たちは大袈裟なことはしなくていいよ」
「何を言われるか」
 席の間から声が上がる。
「伯符兄が欲しいものは何でも我々に言ってください。今日にでも調達します」
「調達するまでもない」
 孫策は杯をつかみ偉そうに言った。
「しばらく川で魚獲りをしたことがないな。今日君たちとオレとで大魚をすくって、酒の肴としようではないか。どうだ?」
「いいな」
「それはいい」
 座は賛成の声で揃った。
 言うなり、孫策は歩き出した。
 孫権もころりと立ちあがって、後ろにくっついていた。弟に手を振って帰るようにしたら、孫権は、
「ぼくも魚を捕まえて持って帰る。母上にスープにして、飲ませてあげたい」
と言う。
「こいつめ」
 孫策は笑って、孫権の頭をくしゃくしゃにした。
「孝養を尽くして、母上に喜んでもらえ」

 皆(水辺で)ビシャビシャになりながら、孫策について川に飛び込んで行った。どれも十五、六の少年だったが、川辺につくと、いつもの端正さは微塵もなく夢中になってころころと笑い合い、次々と上着を脱いで川のなかへドボンドボンと飛び込んで行った。
 孫策はひとり頭から水の中へ飛び込むと、ほどなくして水の中から浮かび上がってきて、手には一匹の魚をもうつかんでいた。
 岸辺の孫権に放り投げるなり、大声で、
「持って帰って母上にスープにして飲んでもらえ」
と叫んだ。
「わぁ」
 孫権はあわてて前に進んで魚を受け取った。
 小さな顔は花を咲かせたかのような会心の笑みだった。小さくもない魚は孫権の懐で暴れ跳ねたが、孫権はなんとか頑張って魚を持ち帰った。
 途中、地面に落としてはまた拾い上げ、やはり、子どもなので魚を抱えているのが嬉しくて、家に着いたときは、さながらお宝を捧げるが如く呉夫人に抱えて見せに行った。
 呉夫人はどこから持ってきた魚か尋ねたが、孫権は、
「お兄ちゃんが捕まえて、ぼくにもたせて帰らせたんだ。お母さん、スープにして飲んでね」
と言う。
 呉夫人はたちまち笑って、
「策はまた川に遊びに行ったのね」
といい、家のものに命じて魚を厨房に運ばせた。