策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

よちよち漢語 二 需要愛先生「思為双飛燕」

 孫権はその場で呆然と立ち尽くした。
 ややもして大声で泣き始め、涙も鼻水も全て流れ出してきた。
 呉夫人が部屋の中から走りでてきてあやそうとしたが、それもならず、孫権を部屋の中へ連れて戻った。
 孫権は榻床の上でだだをこねていた。やがて涙もおさまると、呉夫人の懐にもぐり込んでうーうーとしゃくりあげて、
「お兄ちゃんが権ちゃんをいじめる」
と泣いて言った。
 孫堅はそばでも何ともおかしく笑って言った。
「毎回策の奴が権を連れないで遊ぶと、権はいつもこうなのか?」
 呉夫人はため息をついて、
「あなたはいつも家におらず、策は野生児で権はこんなに小さく、わたしはふつうの女ですから……」
と言った。
 孫堅はちょっと聞いて頭が痛くなり、せわしく手を振って呉夫人にもう言うなと云った。
「わたしは国事の為に駆けずりまわっている。そなたはよく二人の子と暮らせばよいからもうくどくど言うな」
 呉夫人は聞くと孫権を抱えてひそやかに涙をこぼした。

 夜が明けて、鶏が鳴かんとする頃、孫権は早々に榻上から起き上がるなり、ぱーっと門の入り口まで走った。
 遠くから自分のお兄ちゃんが足取りも軽く家に戻ってきた。そばには見知らぬお兄ちゃんもいて、見たところお兄ちゃんとは年もだいたい同じくらいでいろじろで唇が紅く、ほっそりとした容貌をしていた。
 両人とも生まれついての眉目秀麗さによって、朝日の下、並んで来る姿はとても目の保養となった。
 孫権はにわかに昨日の昼のことを思い出した。
 お兄ちゃんと隣の家の何人かのお兄ちゃん達が遊んでいるとき、嫁取りのことに話しが及んで、お兄ちゃんは、自分と一緒に天下を駈け回る嫁が欲しいと言った。
 ちっちゃな孫権は十分にその通りだと思った。
 いつもお父さんに家庭をほったらかしにされ、幼い孫権はお母さんの涙や寂しさを数多く目にしてきたことで、ぼんやりとお兄ちゃんの言うことはなるほどその通りだと思った。
 目の前のこの状景を見て幼い孫権は、いきなりわかったようなわからないような声を上げた。
「お嫁ちゃん!」
 よだれが口許からだらだらと流れ落ちた。
 孫策は弟が門のところに立っているのを見て、遠くから呼ぶと、そばにいる少年に向かって言った。
「こいつが弟の権ちやん」
 少年がまだ返事をしないうちに、向こうから走ってきた孫権がお兄ちゃんに大声で言った。
「お、お兄ちゃん、この人はお兄ちゃんがさらってきたお嫁ちゃん?」
 少年はそれを聞いて、切れ長の目をぱっちりと見開いてずっこけそうになった。
 その後、孫策孫権に、この人は周家のお兄ちゃんでとても遠いところから来ていて嫁では無いと説明した。孫権は聞きながら頷いた。
 しかし、なぜかわからないのは、あの日、孫権は周家のお兄ちゃんに好感を持ったのに避けられて、孫権と遊ばなかった。
 ちっちゃい孫権にはいくら考えてもわからなかった。




タイトルの訳に悩んでいます。うーむ。