策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

よちよち漢語 十三 需要愛先生 「思為双飛燕」

 孫権は呉夫人の側にしばらくいたが、さっきの川のにぎやかな様子を思い出し、我慢できずにまた飛び出していった。
 先ほど通った路を通って川岸のほうへ走って行き、森林を抜けて行くと、遠くもないほどのところからよく知った声が聞こえた。
「この二日間オレは父上と行動を共にせねばならない。もうお前と一緒にいられる機会はない……」
 孫策の姿が見えると孫権は口を押さえて笑った。
 こっそり木の陰に身を隠し、首を伸ばしてお兄ちゃんの様子をうかがった。
 孫策はこの時、大樹の根元に寄りかかって座り、上半身裸で、両脚は前に投げ出し、両手も大きく拡げて大の字になって枝葉の揺れる間から空を見上げていた。
「公瑾、オレのいっていることを聞いていないのか?」
 孫策の側に座り、同様に上半身裸の少年が、まさしく周瑜であった。
 この時の周瑜は長髪を解き、髪を手で弄び切れ長の目は自分の濡れた髪をみつめていて、あたかも髪を乾かすのに集中しているようだった。
「あぁ」
 孫策の話に周瑜は一声答えた。
「あぁ、何だって?」
 孫策は顔を歪めて言った。
「面白くねえな」
「きみはいったいどうしたら愉快なんだい?」
 周瑜は物憂げに言った。
「オレは、この次いつ帰ってこられるかわからない。お前……お前は」
 長い間お前というのに時間を費やして、やっと言う。
「お前もオレに見送りしないのかよ!」
「わたしは今、きみを見送っているんじゃないのか?」
周瑜は笑った。
 しかし、周瑜の笑いは孫策を怒らせたようだった。
 孫策はすばやく体を横向きにすると、
「オレは周二お前に言っているんだ!」
 周瑜は物憂げに答えた。
「何がだい?孫大」
 孫策はそばに身を起こして、直接周瑜の足の上に押しかかった。優位に周瑜を見下ろし、顔をゆっくり近づけていったが、周瑜の表情は不意に変化した。まずは驚き、そして落ち着いて、顔を上げて一声もたてずに孫策を見た。
 眼の光にはあたかよ孫権の目を眩ませるような何かの色彩が流れていた。孫権は自分のお兄ちゃんの顔がだんだん近づいて周瑜の顔と重なるのを見ていた。その瞬間、周瑜は手を伸ばして二人の間を遮った。
 周瑜の手つきは穏やかで、声も驚くほど落ち着いていて、少年からまだ完全に変わっていない喉の奥から絞り出された低く小さな声だった。
 周瑜は低い声で言った。
「伯符、きみもわたしももう成年だ。幼児の遊びをみだりにくりかえすものじゃない」
「幼児?」
 孫策は眼を細めて睨んだ。
「お前は半年前を幼児というのか」
「じゃあ何と呼んだらいい?」
 周瑜の声はちょっとからかい混じりだった。
 孫策は仰け反って、指で周瑜の左胸を指すと、やたら傲慢な言い方で、
「ここはどうだ?」
「めずらしいものでもない」
 周瑜孫策の指を押し退けた。