策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

よちよち漢語 十八 需要愛先生 「思為双飛燕」

七章 贈錦袍 錦袍を贈る

孫権が父上に従って軍営についたとき、はじめてこんなにたくさんのあらゆる武器や勇ましい兵士や馬を見た。
 小さな心は感動興奮で占められた。
「父上、これらはぼくらのものですか?」
 我が子の興奮した小さな顔を見て孫堅は上を向いて笑った。
 豪快さが溢れる様子で、周囲を指差して、
「これらはみな英雄にしてよく戦い、家を守り、国を守る江東の子弟だ。みなわたし達孫家のよき兵士達だ。権よ、お前が成長した暁には兄と戦場で肩を並べて、父と一緒に我らが江東の一世一代の偉業を切り開くのを助けてくれ。その時には我らの兵はさらに精強に、兵糧もより豊かに、お前が今日みたよりももっと雄壮になるのだ」
「権は早く早く大きくなりたいです!」
 親子がちょうど話しているとき、孫権が顔を上げると、お兄ちゃんが幕舎から出て来たのが見えた。
 一年も会わず、孫策は以前よりもさらに背が伸びて、よく日に焼けたようだった。ただ、表情は却って一年前とそっくりそのままで落ち着きがなく、頑固で青年の気概が浮かんでいた。
 孫権を見つけるとすぐに走り寄ってきて、孫権の頭を撫でた。
「仲謀、お前どうしてついてきたんだ」
 幕舎に入った後、訊かないわけにいられないと、孫権を隅に連れてくると、細かく家のことや、母親の様子を質問した。
 また、その他の弟妹の近況も尋ねた。
「お兄ちゃん。どうしてお兄ちゃんのお嫁さんのことを訊かないの?」
 孫権は家族のなかにまだ一人孫策がきいていないのに気づいた。
「ばかちび、それは訊かないのではない。まだ訊いてないだけだ」
 孫策は軽く咳をひとつして訊いた。
「じゃあうちの嫁は最近どうしている?」
「元気だよ。お母さんと一緒にいるよ」
 お兄ちゃんが訊いて間もなく、孫権はきょろきょろと幕舎をでて遊びに出掛けるつもりになっていた。孫策は彼をつかんで止めた。
「あわてるな。お前にはまだ聞きたい話がある」
 面を伏せて少し思案する風だった。
「お前最近、公瑾兄ちゃんと会ってはいないか?」
 孫権は公瑾お兄ちゃんと聞くなり、本来さっぱりと忘れていた事を思い出してきて、なんという恥辱!なんという冷淡さ!何と物をあてがわれたとは!
 全てが頭に湧き上がり、本来頭の回転のよい小さな顔がにわかに顔色を変え、への字口になり、小鼻は上を向いた。
 その顔には名状しがたい哀しみと憤りがあった。
 孫策は、その実、孫権の口から周瑜についていくらか詳細な情報を聞くのを期待していなかった。
 ただ気まぐれに聞いてみただけだった。ただ彼が周瑜のことを尋ねたとき、孫権の表情がたちまち怒りを含んだものとなり、びっくりさせられた。
「権、お前どうしたんだ?」 
 孫策は内心緊張した。すぐに孫権の小さな手を握り、どうしてさっきまで熱かった手までもがひんやりしているのだ?
「公瑾お兄ちゃんの家で事件でもあったのか?」
「んー、ふんっ」
 孫権は袖を振りきって、喉をすっきりさせて威張って言った。
「お兄ちゃんは家に手紙を書くとき、いつも向かいの周家にも一通持たせているんじゃないの?周瑜とそんなに頻繁に手紙の往来をして、まだ何かお兄ちゃんの目に逃す物があるの?ぼくは毎日学堂で勉強しているんだから、周家との付き合いはまったくなくて、また、知っていたとしても、お兄ちゃんは聞く人を間違えているよ」
 ひとしきり話を聞いた孫策は目を丸くし、口をぽかんと開けた。
「おい?」
 手を伸ばして孫権の鼻をちょっとつまんだ。
「ちびすけ。知らないなら知らないと云え、なんでそうぺちゃくちゃとくどいんだ」