2021-03-22から1日間の記事一覧
地面には何着もの華美な錦袍が広げてあった。その衣服には雲状の細かな刺繍があり、つやがあって洒落ていた。 孫策はひとしきり迷って、一着の暗紅色の錦袍を引っ張り出して、側の親衛隊兵に渡した。 「収めておけ」 「お兄ちゃん。これはどこから来た服なの…
孫権は軍営の中で落ち着くと、すぐに孫堅の所へ行った。傍について、目にするもの耳にするもの皆全て孫堅軍が董卓を討伐するためのことだった。あるときは城攻めして退却、あるときはまた疲れた獣が抵抗を続けるように、ひたすら孫堅はずっと進むも退くも自…
七章 贈錦袍 錦袍を贈る孫権が父上に従って軍営についたとき、はじめてこんなにたくさんのあらゆる武器や勇ましい兵士や馬を見た。 小さな心は感動興奮で占められた。 「父上、これらはぼくらのものですか?」 我が子の興奮した小さな顔を見て孫堅は上を向い…
孫権は硯をつかんでまっしぐらに駈けだして、周家の大門を飛びだし、向かい側へ行き、自分の家に飛び込んだ。寝室まで駆け込むと床台へと倒れ込んだ。怒りで手足をバタつかせて、むせび泣き、全く以て面子が潰れ恥さらしになった。 ドキドキしながら周瑜の前…
孫権はこの時呉夫人がどれほど辛いか気にせず、早くに出かけたいと思い孫堅の許しを得て、すぐ部屋に戻り旅の支度を始め、衣服を包んだ。 孫権は隅っこに積まれた竹簡を眺めた。いささかこの本は重いと思うと、もって行けない。よくよく選んで、選んだお気に…
六章 奇恥大辱 大いなる屈辱 孫策が去った後、家の中は二人の女主人がとりしきり、一時客人や友人達とのつきあいもぐっと減った。屋敷の中も少なからず静かになり、孫権も落ち着いて勉強できるようになった。 が、しかし、孫権はかつて無いほど、勉強に集中…