策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生38

「天火」

 孫氏の部将が勝つと、両岸の歓声は雷のようである。その他の船は橋の下でそれぞれ揺れていた。あるものが船頭上の孫策に向かって挨拶した。すると、岸壁の方へこぎ始める、接岸の用意をした。

 船上の兵士達が次々と水中に飛び込むと、孫策は船頭に座り、手から鮮やかな赤色の花球を放り投げた。水中の兵士達は笑い合って受け取った。さらに接岸すると数人の将軍達の手中に手渡された。

 すでに勝ち、すぐに安心して待っていた。最後に岸に上がるとき、小舟があり、橋の下から軽やかに揺れていた。彼を目指して奔ってきた。船の上にいる人はまさしく袁家の屋敷の侍者の服の色で、顔もよく見知っていた。
「孫校尉、どうぞ速やかに岸に上がられよ」
 孫策は眉をしかめた。
「何事ですか?」
 相手はまた言った。
「校尉どうぞ早く」
 孫策は答えず、直接水中に飛び込み、岸辺まで泳いだ。とっくにそこで待っていて、彼のためにそそくさと薄衣を着せかけた。前の馬車を指さした。
「校尉どうぞ馬車にのってください」

 孫策は一瞬目を閉じて、もはや問わなかった。帷を開いて大股で乗り込んだ。
 馬車の外には濃い色の帷がかかっており、車中は薄暗く彼の視線を飲み込んだ。
 意外でもなく、暖かい手が近づいてきて、彼の胸と腰や腹の間を撫で回した。次の瞬間には、肩に着せかけられた衣も乱暴に引き裂いた。

 さっき身体の上についていた水の珠もまだ完全に衣服に吸われておらず、彼の額の上には汗水が滴っていた。
 
 時間がやや経ち、孫策の目もだんだん車中の暗闇に慣れてきた。振り返って笑った。
「袁叔は来ないと仰っていたはずでは?」

 袁術は彼を再び押し、口の中で曖昧に言った。
「あるものがわたしに告げたのだよ。この頃そなたは多くの兵士と一緒に長く練習していたと。今日も考えるに自ら参加するだろうと、果たしてその通り……」
 彼は孫策が船頭に立ち、若く健康な赤裸々の身体を思い出していた。日光にさらされていて、淡い小麦色にやけているのが、千人、万人の目に触れたのだ。
 日光は河の水に倒れ込み、波の光りが融けた細かい金のように流れた。孫策は船頭に立ち朗らかに大笑いした。眉がつり上がった。
 車中はもともと蒸し暑く、全身の毛穴がみな尖った熱が、先を争って皮膚を痛めつけた。却って潜り込むこともできずに、すぐに喘ぎを抑えられない。

 彼は孫策の衣服を引き裂いた、肌の上の水の跡はかわいていなかった。まだ肌にはかすかに涼しさがあり、貪り吸いつくのをやめられなかった。
 袁術は先の景色を思い出し、また言った。
「来年は参加することは許さぬ」

 帷がかすかに揺れ、細く光りが目に刺さってきた。孫策袁術を押し倒した。横になり、目を閉じた。
 先ほどの侍者が車外から小声で聞いてきた。
「殿は馬車を降りますか?皆の者は孫校尉が馬車に乗り込んだのを見ただけで、ここにおられるのを知りません」
 袁術は我慢できなかった。
「奴らには会わぬ。わたしには急用があり、校尉を速やかに屋敷に召し帰したと言え」

 孫策目を見開いた。車の装飾的な華麗な帷の模様が軽々と揺れた。阻むものもなく、馬車は帰り道についた。

 袁術の手が孫策の腕の上を滑りおり、彼の腰に落ち、ゆっくりと摩った。
 さっきはあんなに急で、焦った若者のようであった。今は時間があるが、誰かが邪魔する保障はなかった。

 孫策の身体の上の水分はすでに蒸し暑い空気にとけず、車中の香気が絡み合った。彼の腰際のへこみにはうっすらと塩辛い汗が滲んでいた。
 車輪を軋ませ走り、馬車は揺れと衝撃を時々受けた。袁術はうっとりとして、手の下の身体には震えともがきが起こり、抵抗なのか受け容れているのかわからなかった。
 汗水は皮膚をさらに滑らかにし、表面の柔らかな触感と柔軟な筋肉と硬い骨、さらには滾る鮮血の流れ、若い雄の身体の中には外よりも更に激しい火があった。まるで淫らに燃える袁術の体内の熱毒に炙られたかのように。

 熱力と情欲、汗水が全身の毛穴から湧き出していた。ゾッとするほど抑えきれない快感だった。
 火の如く苦しめられ、雲の如く上りつめ、骨を蝕み魂を融かした。
 逃げきれない情欲が潮を引き墜落した。袁術は喘いでぐったりと倒れた。

 馬車の中は一時安静になった。孫策は突然座り起きた。着ていた長衣を脱ぎ捨てた。窓の帷をめくった。
 風が入ってきて、汗で湿っていた身体に吹きつけた。袁術は我慢できずに震えた。
 彼がまだ口を開く前に、外の馬上で命令を待つ侍者がいて、聞いてきた。
「校尉、なにかお申しつけですか?」
 孫策は却って尋ねた。
「今はどこですか?」
 侍者が言った。
「すでに南門に近く、もうすぐ入城いたします」
 袁術は眼を細め、孫策横顔を窓の明るいところに押しつけた。輪郭がはっきりとしていて優美だった。声は少し掠れている。袁術は肘で身体を支えた。彼の肩を引き寄せようとする。
 孫策は言った。
「先に将軍府に戻らないで、道を変えてわたしを自分のうちに送ってくれ」

 袁術の手は空中に止まっていた。孫策が振り返ってから尋ねた。
「なぜ?」
 孫策は声を和らげ、顔を低くし、宥めるように、また誘惑するようでもあった。
「袁叔は先に半日下さい。洗顔して着替えも必要ですし、その他の人に言い訳もしなければ。わたしもやることがありまして、晩膳を摂ってから、お屋敷で再び相談しましょう」
 袁術も疲れていて、言った。
「晩に来なさい」

 晩になり孫策は訪ねてきたとき、騎馬に乗ってきた様子はなかった。
 袁府の侍衛、従僕は彼のことを何度も見ていた。だが、彼がこのような濃い色の服を着て、冠を被り、佩玉を付けているのを見たことは少なかった。車から降りてきて、手の中に絹の包みを持っていた。
 袁府の内路は十分彼は知っていたので、侍従の供を断り、彼らも無理強いをしなかった。

 日光はすでに隠れ、晩風は涼しく爽やかで、地上から浮いてきた熱と庭の垣根の上の薔薇の花の香気が混じり、昼間よりもさらに爽やかで甘やかだった。
 外から引き入れた水が静々と音がした。天上に星が無数に輝いていた。

 彼の歩くのはとてもゆっくりで、歩きながら、考えていた。
 穏やかな夏の夜、錦繡に包まれている。