策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生40

「議兵」

 袁術は榻椅子に端座し清い風が吹き、池には温い水気があり、空の色はいよいよ遅くなり、複雑な緑の葉が重なり暗い影を落としていた。深く重い墨がかった青色が沈んでいて、花の香気もいよいよ濃くなる。
 彼の袖の中にはあの玉璽が隠されていた。時々手を伸ばして、ちょっと摩った。気持ちは思わず喜びの色が、眉の上に現れていた。

 楊弘は座席を与えられ、側に座った。彼はただ微笑み、質問もしなかった。袁術がまず口を開いて、それから話し始めた。
「殿はいつ孫郎に出兵を許されるおつもりですか?」
 袁術が言った。
「彼の自分の意思に応じる、呉景孫賁には後退させてはならない、いわんや兵は神速を貴ぶという、もし劉繇が防備を固める前に出撃できるなら、もちろん早ければ早い方がよい」
 楊弘はしばし考えていた。
「殿はすでに孫将軍の元部下多数を孫郎に返していて、そのうえこのたびかれの舅父や堂兄を助けるために、精悍な将兵が入れば、一度奇襲ができる。良い条件だ。しかし、兵糧、秣が準備が必要ですな。しかし、そんなに多くは必要ではない。ただ夏に横江を奪回できれば、その後は南渡し、彼ら自身に準備させることができます」
 袁術は言った。
「徳広とわたしが思うところは、おおよそ変わりない。見たところ差し支えない。このように、わたしは孫氏には恩徳を施している」
 一つ間を置いた。
「兵糧、秣は多くは渡せない。もし曲阿が取り戻せたら、彼に寿春に取りに来させたらよい」
 楊弘は笑って言った。
「殿の御意志では、戦線は長過ぎない方がよいと?」
 袁術は語る。
「曲阿のことは、彼はもう何度か頼んでいた。彼の母や弟妹はまだあちらに留まっている。劉繇は自分に仁義を命じておるが、ただ陶謙の前のことのように、心配は免れない。もし何かあれば、彼は必ずやわたしに恨みを持つだろう。もし心を尽くさなければ、人情を全うしたことにはならない」
 楊弘は頷いた。
「将軍は御明察です。しかし」
 彼は左右を見回した。
「さっき侍者が知らせに出てきたとき、孫校尉もいますと言っていました。今またどこに行ったのですか?」

 袁術は微笑んだ。
「ちょっとしたものを取りにやらせた。しばらくしたら戻ってくる」
 彼はついに我慢できずに、袖口を少し開いた。
「徳広はこれを知っているか?」
 楊弘はやや驚き、すぐに跪いた。
「おめでとうございます殿!」
 袁術は玉璽を隠した。
「立つがよい。明日、広間で、そなたは如何にすべきがわかっていよう」

 庭の外で侍衛が大声を出した。
「孫校尉がお着きです」
 孫策は手に玉の箱を捧げ持ち、まず袁術に捧げ、それから楊弘にも挨拶した。
「お手数をおかけ致します。楊長史」

 楊弘は言う。
「校尉はなんのお話をしているのかな。もし横江を奪回できたら、曲阿を攻め落とす。これは袁公の徐州の戦いに大いに有利になる」
 袁術は玉の箱を開けて、玉璽を注意深くその中にしまった。それから二人の話に加わった。
「丹楊の民は勇敢で、精兵を多く出す。もし順調に取り戻すことができたら、西北と東南の両戦線から徐州に進撃可能になる」
 彼は孫策を見た。また昔のことを思い出して言った。
「策児はまだ幼かったころ、この地で劉備に会ったことを覚えているか?」
 孫策は笑った。
「ぼんやりわずかな記憶しかありませんし、はっきり覚えていません」
 袁術も笑った。
「そうだな。そなたは初めは彼には本当に会わなかったのだ。彼が来ると聞いて、下がりますと言った。わたしはさらにそなたに尋ねた。どうして去る必要があると」
 彼は指で孫策を指し、楊弘に言った。
「徳広あててみよ、あのころ策児はまだ十四で、何を言ったか?」
 楊弘は笑ってお断りした。
「どうしてあてられましょう?」
 孫策も首を振った。
「ほんとうにわかりません。袁叔はまだ覚えておられるのですか?」
 袁術は言った。
「英雄は人を忌む。笑わせるかな劉備がいかなる英雄か?」

 楊弘立って下がった。空の色は遅くなっていた。明日の広間でのこと、三人ですでに定まった。思うに時勢をわからぬものはおらぬだろう。
 袁術はただ言った。
「策児はもう少し留まれ、そなたとは話すことがある」

 孫策は彼の榻椅子の側に座り、袁術は指の腹で彼の目尻をそっと擦った。
「そなたの要望に応じた、心の中ではいささか手放しがたい」
 孫策はすでに真の成人男子で、彼の眉は硬く、目の色は深く、唇はふっくらとしていて多情で、笑うときれいな白い歯が見えた。
「袁叔まだなにかお申しつけが?」
 袁術は言った。
「わたしはそなたが母や弟妹を心配しているのを知っている。家族の危機となっては行かざるを得まい。曲阿を奪取したら、家族をみな寿春に移しなさい」
 彼はちょっと考え、また一言を加えた。
「そなたの母がここに来たら、わたし自ら彼女と相談しよう。長男の結婚については、彼女も必ずそなたを結婚させようと急いでいるはずだ」

 孫策はうっすら微笑んだ。話は十分堂々としていた。
「昔霍去病が言いました。匈奴が滅んでいないのに、なんで家が要りましょう。今わたしはまだ殿のために江東を平らげていないのに、またなんで一時を急ぐ必要がありましょうか」
 袁術はため息をついた。
「わたしはそなたの心をわかっておる。このたびのそなたの出兵には、袁叔が上表して新しく封じよう」

 彼は指の先で孫策の下顎を持ち上げた。
「初めこの袁叔も二十歳前に洛陽を離れて出仕し、折衝校尉に封じられた。今またそなたは二十となり、我が袁氏の大旗を揚げ、兵を率いて出征していく。同じく折衝校尉の位を授ける」