周瑜はしばし無言でいた。ようやく考えて口を開く。
「では、このわたしの身体は……」
「元放先生!」
「これは孔明の二十年の寿命と交換したものじゃ」
左慈は諸葛亮が大声で制止したにもかかわらず話していた。
周瑜はその場でしばし硬直していた。諸葛亮は重々しくため息をついた。
「それにな、凡俗のものなら一生を差し出したとしてもそなたの髪ひとすじとさえ交換できぬ。この孔明でさえ二十年の寿命と交換じゃ」
左慈はため息をついて手を後ろに回した。
「孔明、それはほんとうなのか?」
周瑜は極力自分の気持ちを抑えながら諸葛亮に尋ねた。諸葛亮は語らなかった。周瑜は重苦しく息を吐いた。
「そなたはなぜ苦しんで……」
怒りでもない憤りでもない、彼はいったい……我慢できずに?そのような口調はかえって諸葛亮の心臓を重苦しくさせた。
「すべてはわたしが願ったことです。公瑾あなたが重荷に思う必要はありません」
これを聞いて周瑜は驚いた。これは怒っているのか?
「公瑾、孔明が失ったのはわずか二十年の寿命だけではないのだよ。知っておるか、そなたが実体の身体をもっているのは極陰の体で……」
「元放先生!」
「もし、ずっと孔明の側に居れば始終彼を傷つけることになる……」
「元放先生!十分だ!」
「彼は一生病弱になるだろう……」
左慈の最後の一言をきくなり、周瑜は硬直して立っていた体から力が抜けてしまった。
それから左慈と諸葛亮がそれ以上何を話したのか全く聞こえなかった。左慈がいつの間にかいなくなっていたのにも気づかなかった。諸葛亮はそのような周瑜を見て心中始終耐えられなかった。だが言うべき言葉も知らなかった。