策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

よちよち漢語 13 亮瑜啊亮瑜先生「伴君左右」

 諸葛亮はそれを聞くと苦笑いした。もし手放せるのならとうにしています。ですが自分は泥にはまるようにもはや深みにはまっています……今現在、周瑜を手放したいとも思いません。どうか元放先生このままでいさせてください。 諸葛亮は八尺の身体を屈めて、向かいあう老人に恭しくお辞儀をした。
 左慈は驚いた、あの淡く微笑んで無欲で何も求めなかった孔明が、と。
 諸葛亮が仙人修行できる身体と知った左慈はかつて諸葛亮に一緒に修行しないかと誘った。十年と経たぬうちに成果は出るであろうとも。淡い笑みで断られるとは思わなかった。ただ仙人には向かないとだけ言った。そしてあの劉備が願って願って三度目で会うことにした。このときは考えるに、劉備が補佐すべき人物でなかったら、劉備は家の外で死んでいただろう。彼も一目ではわからないのだ。
 しかし今彼はひとりの肉体もない魂魄のために、自分に頭を下げている。自分が見過ごすことを願っている。
 ひとしきりの沈黙の後、左慈周瑜に向かって歩いた。諸葛亮はあわてて左慈を止めようとしたが、却って仙人によって止められた。
「元放先生」
 左慈は聞こえない様子で、大股で周瑜に近づき屈み込んだ。右手を御札のところに当てて口の中で呪文を唱えた。御札は柔らかな黄色い光を出した後に周瑜の額から落ちてきた。諸葛亮は訝しげに左慈を見つめた。彼は周瑜を回収しに来たのではないのか。
 理解できない様子の諸葛亮を背にして、左慈はじっと周瑜の血色のない顔をしばらく見ていた。手を伸ばして周瑜の喪服の襟を開いた……とても青白い肌にみぞおちの部分の字ははっきりと見えた。
 亮
 諸葛亮そのはっきりとした字を見て、すぐに事情がわかるので、なにも話さなかった。ただ左慈が口を開くのを待った。左慈は重々しくため息ついた。立ち上がり大人しくしている諸葛亮を見つめた。
「世間の人はみな鬼神の力を恐れる。かえって主なき魂魄が容易に人の執念に囚われるとは知らなかった。周瑜孔明の側に囚われている。孔明そなたの情が余りに深いからだ。わたしは警告しておく。彼はそなたの一世の業である。しかしそなたらはもう……」
 老人は慈悲のこもった目で黙っている諸葛亮を見つめていた。本来天命を受けて大きな成果を収めるべき人だが、かえって業のためにこの世の人が夢にまでみる天命を捨てた。自分が何を言っても、彼らふたりの運命はすでに絡み合っている。どうして自分が断ち切れようか。
「彼のためか……値はある」
 彼を鍛えるための業でもあった。諸葛亮は周瑜の側に座り、彼の衣服を整えようとした。しかし、伸ばした手は周瑜の身体を通り過ぎてしまった。
 彼に触れられない。
 諸葛亮は黙り込み、袖に四年間隠していた物を握りしめ、振り返って左慈に微笑んだ。
「元放先生にひとつお願いがあります」