策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

よちよち漢語 14 亮瑜啊亮瑜先生「伴君左右」

 柔らかく暖かな光が薄らと周瑜の美しい顔の上を射していた。蒼白だった皮膚の色はいささか赤みを帯びて潤っていた。長い睫毛が震え、周瑜はゆっくりと目を開けた。右に顔を傾けようとして、意外なものに触れた。腰には重からず軽からずの力がかかっていた。周瑜は振り返ると、諸葛亮が自分を抱きかかえて床で寝ていた。彼の頭は周瑜の右肩に埋まっていた。
 これは……。
 陽光がだんだん目に痛くなってきた。周瑜は手を上げて目に刺す光を遮った。急にびっくりした。諸葛亮を押し退けて、口を開く前に、その者はぼんやりとした眠たそうな目で笑って言った。
「おはよう……公瑾」
 こういったときにでもまだ笑っているのか、周瑜は自分の腰に抱きついている諸葛亮をつかみ離そうとした。だがそこで手を止めた。驚いて自分の手を見ていた。時間が停まったかのように。動けない。
「これはどうしたことだ」
「そうですね天がわたしを憐れんでくださり、公瑾に実体を与えてくれたのでは」
 諸葛亮は嬉しげに笑い周瑜の手を捕まえて自分の頬に押し当てた。周瑜はしばらく意識を取り戻すことができなかった。自分の手に伝わってくる感触に驚いていた。それは生きている間、毎日感じていた感触だった。まちがいない。
 ほどなく、周瑜はいつものように落ち着いてきた。忙しなく自分の手を引き抜き床から這い上がった。頭を下げると自分の透明ではないけれど青白い両手が見えた。……自分は陽気がもどったのだろうか。周瑜は夢を見ているようだと思った。幽霊でも夢を見るなら。
「軍師、もう日が高いですよ。軍師はまだ起きないのですか」
 趙雲がガタンと戸を開けた。振り返って扉を見た。
「昨夜は鍵をかけなかったのかな」
 突然飛び込んできた趙雲に、周瑜はもう心臓が狂ったかのようなリズムを刻んでいた。耳元で自分の心臓が跳ねる音だけが聞こえるようだった。
「子龍、入ってくるなら先にノックしなさい」
 諸葛亮は床に座りながら何とも言えない顔をした。
「あ……」
 趙雲は驚いて周瑜の方を見ていた。
 周瑜はその場に立ち、動けなかった。この時は今期待しているのか、あるいは心配、恐れなのか自分でもわからなかった。
「軍師はなぜ地面で寝ているのですか」
 趙雲周瑜を通り過ぎて諸葛亮を引っ張って起こした。
「まさか夜中にベッドからころげ落ちたのですか」
 どうしてこうも天はわたしを揶揄いになるのか……周瑜は俯いて自分の幻のような両手を見つめた。自分はとうに死んだのではないか。さっき自分が願ったのはなんだったのか。
 諸葛亮は周瑜の硬直した背中を見つめていた。それに対して趙雲は、「軍師も失敗することがあるんだなぁ」と言っていた。
「子龍は先に戻ってください。わたしは少し気分が悪くて。一人で休ませてください」
 趙雲は聞くなり、すぐに心配そうに諸葛亮の疲れた顔を見た。
「軍師、病気ですか。きっと軍師は最近一心に内政を整えていらしたから疲れたのですね。だめです……それがしは軍師に医者を呼んできます」
 諸葛亮は入口に飛びだそうとした趙雲を呼び止めた。
「必要ありません……わたしは一日休めばよいのです。子龍は戻りなさい」
「ですが……」
 趙雲はしばし迷い、やはり諸葛亮の言うことを聞いて部屋を出ていった。現在、部屋には諸葛亮と周瑜が残された。
 諸葛亮は周瑜の後ろに歩み寄りゆるゆると抱きしめた。かれは確かに存在する。手の中には透けることのない身体が証明している。