策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

よちよち漢語 5 亮瑜啊亮瑜先生「伴君左右」

 諸葛亮ははっと驚愕した。以前東呉で確かに愛慕の心は表に出していて、道行く人も皆知っていた。ただし彼は怒らず悩まず、明確な返事が来ないとしても、周瑜から見ると、面白半分にやっているだけにも見えた。現在突然この一言で、彼に話そうとしていたこともみな喉につかえた。
「公瑾、あなたは……」
「軍師」
 趙雲がドシドシと入ってきた。やや訝しむような諸葛亮諸葛亮無人の向かいのところにおいてある目につく一杯の茶杯、思わず冷や汗が溢れてくる気がした。
「子龍」
 諸葛亮は振り返って何かを探しているような趙雲を見た。また、向かい側を見るとあの江東の周郎がお行儀良く座っていた。
「軍師、その……それがしはさっき軍師がその……一人で……独り言を、それ……それがしは………」 
 趙雲は急に顔を赤らめ、身を屈めると、周瑜の前の茶杯をみつめて、やっと言い出すことができた。
「それがしが思うに、周都督はすでに亡くなられて……、軍師は決して悲しむに度を超えないで下さいよ」
 諸葛亮はふと苦笑した。この子龍におかしくなったと思われたようだった。幽霊などは信じない自分も、さっき初めて公瑾をみて、驚き……かえって喜びが多かった。ゆえもなく羽扇を揺らしながら、趙雲を見て言った。
「子龍がほんとうにわたしを心配してくれるのなら、わたしのところに道士を連れてきてくれないか。周郎の魂魄がどうもわたしにとりついているようなのだ」
「軍……軍師……」
 周瑜はそばで眉をひそめた。この諸葛亮は蜀のためにつくしているが、このように自分のところの将軍も揶揄っている。周瑜趙雲が初めて東呉に来たとき引き抜かなかったことを後悔した。こんな性格の悪い軍師のもとで、きっと苦労しているだろう。
「よい、わたしは大丈夫だ。荊州に着いたら教えてくれ」
 諸葛亮は依然として微笑んでいて、かえって趙雲をひどく驚かせた。明らかにさっき船に乗る前は、諸葛亮は哀しそうで孫権と同様に泣き出しそうな様子であった。今は何もなかったかのように、いつものように何を考えているのか測りがたい笑みを浮かべている。
 さっきの幽霊の話は、趙雲は武人出身で一身剛毅胆力のかたまりであり、幽霊などは信じなかった。いわんや自分のうちの軍師は神仙みたいなものだから、怪力乱神などは信じられなかった。
 そこで諸葛亮が気を取り直しているのがわかって、趙雲は嬉しくなり、安心して出ていった。
「公瑾はなぜそのようにわたしを見るのですか」
 諸葛亮は変わらず無垢な笑みを浮かべていた。
「わが江東に趙雲を引き抜けなかったのが残念だと思ったからだ」
 周瑜はいささかあっさりと自分の考えを述べた。言ってもかまわないと思ったからだ。
「公瑾は孫呉のために尽くすこと死んでも、なおつづくのですなぁ」
 周瑜はぼそりと言った。
「おのおのの主に尽くすのみだ」
 諸葛亮は苦笑した。彼は早くに周瑜がきっとこの気持ちを受け容れられないと思っていた。現在一人の人間と一人の幽霊での情況下で拒絶されるのは笑うしかなかった。
 同じように才能に恵まれ同じようにその身に責任を負い、そのような人が無意識的に自分をだんだん恋の深みに陥らせていく、その張本人が自分に迫ってくる。ただ、「おのおのの主に尽くすのみだ」と言って。
 彼らは敵であった。
 このあとは無言で相対し、諸葛亮は茶を飲みながらこっそり周瑜を盗み見していた。周瑜は静かに座っていた。黄昏時に近く、周瑜は注意して太陽の光を避けていた。諸葛亮も気づいた。注意深く幕を引いて彼から陽を遮った。周瑜も何も言わなかったし、長江の流れる水の音が聞こえてくるだけだった。