策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

よちよち漢語 番外編1 亮瑜啊亮瑜先生「伴君左右」

 姜維は食事の箱をもったまま、入口の前で長いことためらっていた。趙雲将軍が何度も何度もよく言い聞かせていた。かならず軍師が部屋で一人でいるときはよくよく注意しろと。本来姜維は邪な存在など信じなかった。しかし、道すがら進んでいくと、途中会う者達は同情こそ露わにしないものの彼が驚いて逃げ出すだろうとみていた。
 しかしながら、軍師にはご飯を届けなければならない。そうしないとうちの軍師は自分の部屋で餓死してしまうにちがいない。だれが軍師にご飯を届けると言ったような使いっ走りの仕事がまわってくると思っただろう、だが避けてはいられない。そこで大きく深呼吸をして、力いっぱい部屋の戸を押した。
「軍師、わたしがご飯……」
 その最後はひどく長くなった。
「ごはぁぁぁぁぁぁんんん………」
 手から食事の箱が滑り落ちた。
 軍師は姜維を見てほんの少し驚いた。それはたいしたことがない。それからすごい速さで手の中の巻物が部屋の一方向へ飛んでいった。それから姜維は軍師が落とした二つの巻物が空中の何かにぶつかったのを見た。そこには何の支えもないのに上から一つが釣られていた。もう一つの巻物は空中に浮いていた。
 そして、ボトンと二つの巻物が落ちた。
 諸葛亮は笑って立ち、話し掛けてきた。
「アイヤー、わたしは手がちょっと滑ってしまった。伯約はわたしにご飯を届けてくれたのですか。伯約の手を煩わせてしまいましたね。何もなかったら仕事に戻りなさい」
 それからぼうっと呆けてしまった姜維の運んできた食事の箱を受け取ると、姜維の背をそっと軽く押して戸を閉めきってしまった。
 戸が閉められる音に姜維はぱっと目が覚めた。それから振り返ってみた。趙雲将軍が言っていた通りだ。軍師はとても怖いぃぃぃぃ……。
 驚きの声がだんだん遠くなってから、諸葛亮はため息をついた。振り返って無表情の周瑜にあやしく笑いかけた。
「わたしは公瑾の包囲網を解くためにやったのですよ」
「食べられなくなったのは」
「それは公瑾が門外の伯約に注意が到らなかったことが原因ではありません」
 扇を揺らして大袈裟にため息をついた。
 話をせずに、ただ見つめた。
「わかりました、わかりました、いいでしょう。全部わたしの罪です。公瑾は転んで痛かったのでは。わたしに擦らせてください。さすさす~~~」
 いうなり覆い被さってきた。
 それから姜維趙雲にまた扉の中からよく知ったものが落ちる音がしたと訴えた。趙雲は槍を持って深く息を吸い、大喝して踏み込んだ。
「軍師どうかしましたか」
 すべての動作を一気呵成に行った。完璧だろう。諸葛亮はもう習慣になったようにゆかで苦笑いしながらすわっており、笑って趙雲に話し掛けた。
「わたしは不注意で転んでしまっただけです」
 部屋の中でも転ぶのか、趙雲は頭が痺れた。たが言うべきことも見つからず、「軍師どうか気をつけてください」と言って部屋を出た。中から軍師が謝罪する声が聞こえたが、趙雲は聞こえなかったふりをした。