策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

よちよち漢語 三十七 需要愛先生「思為双飛燕」

十六章 初夜 

次の日、昼食を済ませたあとに、周瑜孫権一人を書房に呼んで、考える様子で告げた。
「きみはお兄ちゃんからのお手紙を読んだかい?」
「よ、読んだよ」
 孫権は内心ドキリとした。周瑜はお兄ちゃんが書いてきた内容を明るみに出そうとでもいうのだろうか。顔が熱くなり、書房の様子を盗み見た。この前のお兄ちゃんと周瑜が書房の中にいたことが思い起こされた……見たところ周瑜は書房の中でいたすのが好きなみたい……顔の熱がさらにひどく上がった。
 孫権の表情は決まりが悪そうで、床を見つめて、顔には赤みがさしていた。周瑜もばつが悪くなり、このことは本来彼の寄与するところではないし、そのうえ孫権はまだ幼いのだし、孫策の計画がいいのか悪いのかもわからない。
 しかし、矢はすでに弦につがえられ、放たずにはいられない。周瑜は咳をひとつすると、目線を外した。
「では、きみはお兄ちゃんの考えをすべて理解しているんだね?」
「わ、わかりました」
 孫権は蚊の鳴くような声で答えた。目線を上げて見れば周瑜孫権を見ていなかった。目線は別の方に向けられ、顔には自分と同じくひどく恥ずかしがる表情が浮かんでいた。孫権はショックを受けた。密かに思った、百戦錬磨の公瑾お兄ちゃんもぼくと一緒で恥ずかしいんだ。
「わかっているならいい。わたしの考えではだいたい明日だろう」
 周瑜孫権の肩を叩こうか手を伸ばしかけて迷い、考え直して叩かなかった。
「明日?そんなに早く?」
 孫権決まり悪げに自分の袖を引っ張った。
「ほんとうはね、そんなに急がなくても、二日後でも遅くないし……」
 その声はだんだん小さくなっていった。
「そう決まったのなら、明日の夜、君は自分の部屋で待って、そこで行う」
 周瑜は一気に言った。
「ぼくの部屋?」
 孫権は恥ずかしがりながら言う。
「ぼくは書房でだと思った」
「書房?」
 周瑜はちょっとびっくりした。
「えっ、もちろん違うよ」
「じゃあ、ぼくは失礼します」
 孫権はくるっと書房から逃げ出すように出て行った。その夜は少しも眠れなかった。
 次の日、本当に立っていられなくて、孫権は真昼の間ずっと眠り続けた。夕方気持ちを奮い立たせ来るべきことに思いを馳せ、孫権は顔が熱くなり心臓が早く脈打ち、考えることもできなかった。
 テーブルの上の灯明は床にはっきりとした影をつくっていた。突然外から誰かが戸を叩く音がする。
「誰?」
 孫権はつばを飲み込んだ。
「わたしです」
 知らない女の返事があった。
「きみは誰?」
 自分についている侍女の声ではなく、孫権はちょっと驚いた。
「周のだんな様からのお申しつけで参りました者です」
「えっ?」
孫権はわからず、戸まで行って開けると、外には淡い赤の着物を身に纏った少女が立っていた。年の頃は十七、八歳、顔立ちはとても垢抜けて美しかった。話し声も優しく、うるうるとしたアーモンド型の目で孫権をじっと見つめていた。
「きみは……?」
「周のだんな様がおぼっちゃまにお仕えせよとお命じになりました」
「ぼくに仕える?」
 孫権はちょっと考えて、ああそうか、周瑜の侍女なんだ、先に自分の準備をさせようとこさせたのだと思った。孫権の側の少女は部屋に入っていった。