策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

よちよち漢語 二十五 需要愛先生「思為双飛燕」

十章 窮途 行きづまり

 孫策のやることはいつも疾風迅雷の如くで、母と弟を連れて曲阿に父を埋葬した後、おじさんの呉景が引き止めたのにもかかわらず、一家の人馬を率い、蹄も停めず徐州江都に向かった。
 いったん江都につき、住居を整えると、孫策はすぐに家の前に故破虜将軍の旗を挿した。父親が生前残した財産を使い、兵を集め馬を買い求め、広く人材を探し集め始めた。
 しかしながら、大勢の人は孫策がたったの十七で、孤児と未亡人の一家と見ていた。そこに、学者で励ますものも現れたので、笑われることは免れたものの、身を投じてくるの無頼の徒やごろつき、さもなければ流民や飢民であり、成果とはならなかった。
 孫策が神経をすり減らした一方、徐州牧の陶謙は驚いていた。別人の目から見ると単にむやみに騒いでいる孫策が、陶謙には喉に引っかかった魚の骨のようだった。陶謙は思い起こした。孫堅は今まで横暴無礼で、以前自分に対しても失礼な振る舞いが多かった。彼の子も又同様で、もし孫策が徐州の地で一軍を指揮し始めたら、自分には全く以て耐えがたい。
 このニュースが陶謙の耳に入った次の日、配下の部将に命じて孫家宅に人馬を向かわせた。
 早朝、孫権は玄関を開けて学堂に向かおうとした時、目撃したのは並んだぴかぴか光る剣戟と鎧の一隊であった。
 白日の下、孫家の一家は陶謙に押し出されるようにして、徐州の州境までほっぽり出された。孫権は馬に乗っていて、頭を捻って後ろのお兄ちゃんの孫策を見た。孫策は一言もいわず、顔を背けて側の陶謙の人馬を見ようとしなかった。
 孫権は心中憤り、尋ねた。
「お兄ちゃん、あいつらはどうしてぼくたちを追い出そうとするの」
 孫策は傲然と言った。
「それはな、陶謙がオレを畏れているからだ。堂々徐州の牧でもこの始末だ」
 孫家の一家が船に乗り出発したのを眼で確認した副将は戻って復命したときに、孫策の話をそのまま伝えた。陶謙は思わず怒り、また、笑った。
「わしがまだ乳臭いような孫伯符を畏れるだと?やつはどうしていわなかったのだ。やつら孫氏はいつも野蛮なことこの上ない。名声もよろしくない!」
 曲阿に突き返された孫策はますます励んで、曲阿でも続けて旗を立て、兵を集め馬を買い求めた。江都での挫折は少しも彼の兵を集める気持ちに影響はないようだった。毎日孫権は、お兄ちゃんの孫策がいつも元気いっぱいで出かけて、ニコニコ顔で帰ってくるのを見た。夜に灯りの下今日の収穫、いくらかの新兵、買った戦馬数匹を組織立てていた。暇な時を見はからって、孫権とも少しおしゃべりしたりした。
 もともと遠くの希望が、あたかも彼らを手招きしているようだ。ほんの短い半月のうちに、孫策は数百人の部隊を率いていた。編成して始めに次男の孫権を自分の新しい駐屯地に連れてきた。孫策は大いに自慢げに孫権に言った。
「権、よく見ろよ。これがわれら孫氏のこれからの希望だ!今日は数百人、明日は数千人、数万人、いつかオレ達は江東を掃討し、天下を駆けるぞ、その日は遠くない!」
「お兄ちゃん!」
 その時の孫権は自分の心もお兄ちゃんの自信満々ぶりに元気づけられた気がした。孫権は簡単に感動するような子どもではない。彼は自分が同年齢の子どもより早熟しているところも多いとわかっていた。落ち着いてもいたし、ただし、彼は認めざるを得なかった。お兄ちゃんの孫策はいつもほんのわずかな時間で人に勇気を奮い起こさせることができると。そのような天賦の才が孫権は羨ましくてしかたがなく、対して孫権は同窓の友達との友誼も得ることができなかった。孫権は自分を本当によくよく変えていくことが必要だと思った。
 軍営から戻った後、孫権は鄭重に竹簡の上に、「孫氏復興、広く賢才を招く」の文字を大きく刻んだ。
 ただし、数百人の軍隊を集めるのは容易でも、維持するのは却って困難だった。兵糧、秣、輜重をどこから得てくるのか?孫策は軍人の家系で自分で考えた。公然と隊伍を組んで家屋敷を襲えない。脳内に霊感の光りがさした。決定する。山賊を撃つ!
「山賊夜盗、皆でこれを討伐します」
 家を出る前に孫策はこう言って母に説明した。
「地方の安寧のために、わたしは兵を率いて討伐に行こうと思います。すぐに戻ってきます」
 孫策はまさしく早く帰ってきた。彼と共に逃げ帰ってきたのは十数人の従者だった。孫権は急いで軍営に走ると、見えたのは顔中土埃だらけの肩を落とした十数人の士兵、そして服はボロボロ髪はバサバサの満面血だらけの主帥だった。
「お、お兄ちゃん……」
 孫権は呆然と孫策の傍に立った。
「その他の人達は?」
 孫策は剣を支えにて立ち上がった。普段は明るい瞳も明らかに暗かった。
 しばしの後、呟いた。
「負けた」
 顔を仰のいてきらめく瞳に涙を隠しながら言う。
「みな逃げ去った」
 孫権はひどく辛かった。絶望に近かった。この新しい部隊を集めるために、彼らは殆ど家財を使い果たしていた。これからどうしよう?彼はどこに行き何に従えばいいのか?