策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

よぼよぼ漢語 策瑜同人 nashichin先生 『蜜月』六

繽紛 下

「大河は東に流れ、天の星々は北斗を讃える、ヘイヘイヘイヘイ、北斗を讃える、生死を共にする誓いに一碗の酒よ……」
 朝っぱらから電話がうるさくて、周瑜は電話の「招待」の後で十八歳とその未来についての問題に関して考えざるをえなかった。
「あ――」
 鏡の眠っていない自分に向かって長いため息をもらし、周瑜は突然一種の「自分はもう若くないのだ」という挫折感を味わった。
「どうした?」
 鏡の中で上半身裸の孫策周瑜の手から絞りきってほとんど無い歯磨き粉を受け取った。
「お前のクラスの担任がまたお前を探していたのか?」
「今回はついに逃げ切れなかったよ、あ――」
 歯を磨きながらため息をついた。周瑜はクラスの担任の程普先生が電話で言った「今週末ご両親に時間を割いてもらってきみと話しあって貰う」という言葉には歯ブラシの速度ものろのろとしてきた。
「理科総合がまたダメだったのか?」
 鏡の中の周瑜の落ち込んだ顔を見つめ、孫策はこれから毎日彼の理科総合の模擬答案を監督してやるべきかと考えた。
「また不合格か、あ――」
 三回目のため息をこぼし、周瑜は自分が高三になってから三回目の理科総合の不合格だと思い出していた。
「……」
 右手でパジャマ越しに周瑜の腰をつかみ、孫策は何か言いかけて止めた。
「なんだよ、笑いたければ笑えよ、ちぇっ!」
 鏡の中の孫策をちらりと見て、周瑜は現在最も面倒なのは成績がひどい有様なことではなく、成績がひどくて両親に恥をかかせる現実であった。
「うちの小瑜児はほんとうに変な奴だな」
 やや背の高い孫策が腰を屈めて、あごを周瑜の肩に載せた。二人のハンサムな顔が鏡の中で映し出され、一つは薄笑いを浮かべて、もう一つはどんよりとしていた。
「数学は毎回テストで百四十以上取れるのに、理科総合で不合格なのはなぜなんだかな」
「興味がないものをどうして学べるんだよ?きみの外国語と変わらないよ?」
 肘で孫策の胸元を小突き、周瑜はこの少し得意げな顔を殴りたくなった。
「でもオレは不合格にはなってないぜ」
 本当は痛くもない胸元をさすりながら、孫策は得意げな表情をすぐにひっこめ苦しげに眉をひそめた。
孫策!」
 不合格の三文字を聞くなり、口をすすいでいた周瑜はもう少しでむせるところだった。
「いいぜ、いいぜ。おまえは父さんかそれとも母さんに来て貰うのか?」
 周瑜がこのとき両親を煩わすことについて心配しているとわかって、孫策は軽く彼の肩を叩きながら聞いてきた。
「あ――」
 四回目のため息。周瑜は歯ブラシを洗うと二人で共用しているコップの中に入れた後、振り返って孫策と向き合った。
「でも両親に話すことはできない、きみだって彼らの気性を知っているだろう」
「でもオレの父さんもいないしな……」
 孫策周瑜の首をかき寄せた。少しもいい考えが浮かばなかった。
「きみをわたしの父さんに見せかけて行ってみる?どうせ程爺さんはきみのことを知らないし!まさか高三のクラス担任が自分のクラスの学生が近所の同性の学生一緒に暮らしていると把握するほど暇じゃないだろうし」
「はぁ?」
 明らかに周瑜のアイデアに対してかなりびっくりして、孫策は顔を傾けて鏡の中の自分の顔をよく見てみた。
「オレはそんなに老けてるか?小瑜児おまえオレが老けてるからって嫌いになったか!アイヤーこれからどうしたらいいんだろうか!」
「誰がきみが老けたのを嫌がったって?」
 孫策の顔を引き寄せ、周瑜はまじめに言い訳した。
「ちょうどわたしは最近造型にちょっと興味があって、きみが中年に変身する格好をさせるよ。うちに行ってお父さんの服をこっそり取ってくるからいいだろ?絶対大丈夫!」
「でも……」
 かっこいいと誇ってやまない顔を撫でさすり、孫策は中年の自分を変身してどんな粗野な男になるものかと考えたくなかった。
「あれー兄さん!策策!きみは瑜児を見殺しにしても平気なの!瑜児はきみの周おじさんにボロボロになるまで殴られそうなのに!」
 孫策の腰に抱きつき首に手を回した。滅多にない愛嬌を振りまく周瑜孫策に対して一番いい方法は「哥」と呼ぶことだとわかっていた。
「おい――オレにとってはおまえの父さんもオレの父さんだ。おいキスするなよ、遅れるぞ!」
 小さい頃から孫策周瑜の硬軟取り混ぜての甘え方に弱かった。今懐にかわいいこが鎖骨にキスまでしてきたのだ。孫策はもはや言うとおりにするしかない。
 土曜日の早朝、家長を呼ばれて緊張の一晩を過ごし、五時半にやっとぼうっと眠った周瑜は早くに目覚めた。しかし中年男として一日を過ごさねばならない孫策は彼よりもさらに早くに目覚めた。周瑜は靴をひきずったまま客間にいくと、ちょうどキッチンで孫策がにこにこしながら冷蔵庫を閉めているところだった。
「きみはなにしているの?」
 あくびをしながら、周瑜孫策が自分より早く起きたことが、程の爺さんが突然笑い出すよりさらに稀なことだと思った。
「よぉ、起きたか?」
 濡れた手をパジャマのズボンできれいにふきとり、孫策はトイレに行きながら困った様子を見せた。
「おまえはおれを中年男に変身させるんだろ?オレはちょっと早起きして自分のこのイケメンな顔をじっくりと鑑賞していただけさ」
「どこがそんなまじめなんだよ」
 孫策が周りの同年齢の男性よりもずっとかっこいいと認めてはいるけれど、周瑜は彼の自分でうぬぼれるお馬鹿な様を受け入れがたかった。
「早くトイレに行ってこいよ、顔を洗ったらわたしがきみを変身させるから」
 理科総合が不合格だったけど、孫策周瑜が本当は聡明で理解力がとてもある人間だとはっきりとわかっていた。さもなければ、彼はどうして毎月のテストで数学を常時百四十点台も取れるわけがないし、どうして一時の趣味で変装の技術を身につけてひとりのハンサムな青年をかっこいいおじさんに変えられるだろうか。当然、孫策も自分が周瑜よりさらに聡明で物わかりのいい人間だと信じていた。そうでなければどうして学校の外でガンガン騒いでおきながら、見られる成績を保持していられるだろうか。どうして「息子」が程爺さんの唾がかかるなか顔色を変えずに平然としていられるだろうか。
 クラスの担任の事務室から出てきて、ほっとひと息ついた周瑜は突然ふざけたくなった。
「ねぇ父さん!」
 孫策の肩によりかかり、手も彼の藍色のコートのポケットに突っ込んだ。周瑜の口調は十七歳の男の子の生き生きしたさまに満ちていた。
「うちの父さんはどうしてそんなにかっこいいのかな!ハハ!」
「それはオレが徳を積んだからだな!」
 指先をそっと周瑜のツンとした鼻梁に押しつけた。孫策は笑うといつもより格好よかった。
「いっぱい喰わせたなこのかわいい息子よ?」
 コートのポケットの中で指を絡めながら、周瑜孫策の手のひらがいつも通り温かいのを感じた。
「息子よ、おまえはオレたちが言った『同年同月同日に死なんことを』を覚えているか?」
 程爺さんと相まみえること二時間弱、孫策はもう父親役に適合していた。
「そんな長生きしてきたパパと息子が一緒に死ぬなんて、パパは本当に大もうけだなあ」
「ハハハ、父さんきみもわたしより一ヶ月先、ああああ…やべっ!」
 程老人にやられてすっかり忘れていた。
「オレは忘れてないぜ」
 孫策はまたにこにこと笑った。周瑜を家へと引っ張って走る。
「ケーキを用意してある。とっくにおまえを待っていたんだ」
 冷蔵庫を開けて、周瑜はいつもはそそっかしくて、スープをすくうのにもテーブル中にこぼしてしまう孫策が注意深くいろんなフルーツで飾り付けたケーキを取り出すのを見ていた。心の内で突然浮かんだ。自分が俗っぽくてこの感動を表現できないことに気づいた。
孫策
 そっと恋人の名前を呼んだ。周瑜は鼻の奥がツンとした。
「きみが今日あんなに早起きだったのはこれを作るためだったの?」
「オレは今週ずっと練習していたんだ、食べてみろよ!」
 形が不格好なケーキを二つに切り分け、孫策は一口周瑜の口元に運んだ。
「わたしは……わたしはまだ将来を約束すると言ってないよ!」
 いささか申し訳なく孫策の手を押しやった。周瑜は自分でもどうしようもなくひねくれているのかわからなかった。
「オレは今朝ケーキを作っている時にはおまえをなんでも受け入れると決めた。早く喰え!」
 再びケーキをすくった手を持ち上げた。孫策周瑜がときたまちょっと恥ずかしがるのがとってもかわいいと思っている。
「うん」
 孫策の手から、周瑜はいちごとマンゴーの混じったケーキを飲み込んだ。
「わたしが将来を約束するときみもわかっていた?」
「そうじゃないと一生策策兄さんとは一緒にいられないだろ?おまえのそのあたりの気持ちはオレがわかっていないとでも?」
 同じスプーンでケーキをすくって口に放り込み、孫策は「おまえを食べることに決めた」という表情で周瑜を見つめながら、相手が怒って否定するのを待ち構えていた。
孫策、ありがとうな」
 うつむき大皿の上のカラフルに彩られたフルーツを見つめ、周瑜はこっそりと目の前のこの人は本当に図図しい。けれども死ぬほど自分も彼と同様厚かましくて、彼の自信満々な所も大好きだった。
「おお――」
 まさか周瑜からありがとうなんて言われるとは思わず、いつもは次の一手まで読むと自負する孫策がどうしてよいかわからなくなった。
「ありがとう、わたしのためにこんなカラフルなケーキを作ってくれて、ありがとう、わたしの一生を共にすると約束するよ」
 孫策の反応を待たず、周瑜は彼の懐に飛び込んだ。感謝の言葉がポツポツと唇からこぼれたが、孫策には本当の告白だと聞こえた。
 その日の夜、高三になってから、十二時前に寝ることが少なくなっていた二人は早々にデスクライトを消し、ベッドでよこたわり長いこと話し込んでいた―― 
孫策、きみは我々で将来どうやって食べていくつもり?」
「ばか、今年は頑張って、いい大学に合格して、それから……」
「でもねわたしは突然大学は受けたくないと思ったんだ」
「どうして?」
「きみは覚えている?二年前わたしときみと口ゲンカしたあと林に行って酔っぱらい達とケンカになったことを?」
「うん」
「わたしははっきりと彼らの顔を覚えているよ。みんな若くて、彼らもたぶんいいとこの大学を卒業しているんだろう、でもわたしは彼らがすでに生活の楽しみを失っていると感じたよ」
「わかるよ」
「だからわたしは最近ずっと考えていたんだ。この一年を切り抜けるか、あと大学四年、その四年を切り抜けるか、わたしたちは本当に望む生活を得られるのかな?」
「オレが保証する。できる」
「うん?」
「おまえは安心しておまえの思う細い道を行け、造型だろうとその他だろうと。オレがおまえの後ろにいて人々の行く大きい道を歩く。もしおまえが細い道で疲れたとしたら、オレはずっと大きい道でおまえを待っている」
「きみは将来を考えたことがある?わたしは本当に造型か、あるいは設計の仕事をしたい」
「考えたさ、十八歳のあの日オレも考えた。オレは化学が好きだ、大学ではたぶん化学工業を勉強するかな?」
「ハハ、わたしたちは本当にいいコンビだね」
「そうだ、規則に従いきちんとしていて、俗っぽくもなく趣味がいい。オレたちが一緒にいれば、少なくとも生活の楽しみを失うことはないと保証する。それにおまえがいてくれたら、もし失敗したとしても生活の頼りとするものは失われない」
「もう一つ問題があるよ、孫策
「うん」
「今日のケーキはなんであんなに多くの種類のフルーツを使ったんだ、完全に調和してないよ」
「そんな調和がどうした?多くの可能性と希望があるのが十八歳なんだ。おまえはこの色とりどりの目を引く色合いに才能の最もいいところが表れているのを感じないか?」