策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生26

「万全」

 袁術は若いとき武芸を習っていた。四世三公の家で、子弟の教育はしっかりなされなければならない。君子の六芸は、みな習熟していなければならない。騎射の道も狩りや遊興で欠かせないひとつである。彼はそれにも十分熱心で学問だって良くやった。
 だが出仕してからは、仕事が少なくなく、身分もまた尊くなり、武芸の稽古はだんだんする気になれなくなった。彼の麾下には猛将が数多おり、自分でも百万の兵を率いるといえど、長剣、鉄弓は身辺にあれど、殆どの時は飾りであった。
 彼の両手は手入れがよく、手指は長く雅やかで、爪はツヤがあって清潔だった。いつもツヤのある肌を撫でていて、自分でも美しいと並々ならぬ自慢だった。

 彼は姫妾が数多おり、色香もたっぷりで、それぞれ美しい姿をしている。容貌体つきは言うまでもなく、心を尽くして陰に陽に、彼に一目みてもらい寵愛をと争っていた。
 彼の目の前に来ると、喜んで迎え、羞じらいながらも、怯えつつ、睫毛を伏せ、臙脂を塗った紅い唇を噛んでさらに紅くし、彼の望むままに身を任せる。
 男はいつもこの一連の行為を食らう。
 しかし、彼は孫策を懐に抱いているとき、かえって自分がいったいどこが好きなのか断言できなかった。

 孫策は幼いとき、眉目は優れて秀麗であり、輪郭は柔らかで、男女の区別ができないような美しさがあった。袁術が考えるに、雨の後の咲き初めの花のように思え、年を重ねたら、すぐに失われていくような麗しさだと思った。
 彼は手段を選ばず、少年を彼の寝台に引きずり込んだ。その場の行為の愉しさだけで、数年も経ったら、全く興味も失せてしまうのではないだろうか?
 だが、世間のことはいつも人の予想を外れ、錦の鮮やかな花が烈火の如く燃えて、彼の骨身まで焼き尽くそうとした。味わいをよく知れば、もう捨て去ることはできない。彼は孫策の願いに応え、盧江に行かせた。疎遠になる気持ちはいくぶんあっても、逆らおうなどとは思わせない。
 彼は何度も召し帰そうとした。孫策は却ってずっと断ってきた。寿春には帰らないと。彼は自分の面子が傷つけられているのを感じた。臣下の目の前で癇癪を起こしたのも何度もある。胸の中の欲望がひっきりなしに騒ぎ立てていた。

 今夜、この石室に入ったとき、その欲望はついに一つの実体となって、彼が今まで何が欲しかったのかわかった。
彼は熱い湯の中で、すでに成長した強靱な肉体をきつく抱きしめ、あれこれとまつわり付き、体はぴったりと張り付き、彼が自分の手の中でもがくのを見ていた。逃げようとして、彼のくるぶしが捕まえられ、再び水の中に引き戻される。

 彼は首の所の若い血と一緒に脈打つ水の珠を吸い取りたいと思った。水に濡れた肌の上に残る暗紅色の跡、それがだんだん深い色に変じ、数時間しても消えることはない。
 彼は石畳に座り、引き締まった腰を押さえつけ、体の下にしている征服された後の淫らな姿態を観賞した。長い指がつかむところがなく、ただ漆黒の牛皮の上を繰り返し滑って、震えが止まず、握り締められなかった。
 ただ欲しいのは彼のこめかみの所で脈打つ熱い血、一波、また一波、つづく高漲。
 なんというめくるめく快楽か。

 彼とて知っていた。このやり方は十分粗暴であるだけでなく、とても危険であると。
 彼の手は孫策にしっかりと握られ水面下では対峙して譲らず、なんの動きもさせなかった。

 孫策は顔を上げて彼を見た。毫も譲る様子はなかった。漆黒の瞳に暗雲が揺れ動く。
「左将軍には自重していただきたい。あまり欲をかかないで下さい」

 彼の指は水に模様を描き、水精の魚を金器で引きつけ、一箇所に集めていた。ただやや動かすだけで、孫策にきつく引き絞られた。

 袁術は俯いて、孫策の肩の所で、深々と息を吸った。
 孫策はいつも薫香はつけなかったが、過去数回肌身を許していると、彼の少年らしい健康な香がした。清潔で爽やか。
 袁術の寝室にいて、情事の後だけ、ほのかな香りが身に染まる。

 そして今回は温泉の中に、侍女によって花の枝や甘露を調合してあり、彼は長く風呂で待っていたので、かつてないさっぱりとした甘い香りが彼の身体から香った。
 袁術は耐えきれず目の前の耳廓を舐め、満足げに乱れた呼吸を感じた。

 袁術はきつく抱きしめていた手を放し、少し距離をとって離れた、得意げになるのは抑えきれない。
「校尉は、わしが万全の策をとっていないと、ここへの召喚に応じないのか?」