策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生10

「美酒」

 侍女達は博山炉を置き、帳を引いて、室内から下がっていった。
 孫策は彼の寝台に座っていた。彼の白い狐裘に身を包んで。
 袁術は近寄って、寝台に腰掛けた。
「まだ寒いか?」

 孫策は頷いた。
「寒い」
 彼らは袁耀の部屋から歩いてきた。袁氏の屋敷は奥深く広い。外はまだ雪が降っていた。孫策は外套一枚着ただけだったので、袁術は自分の着ていた狐裘で包んでやった。
 表面についていた細かな雪が暖かな部屋の中で融け始め、きらきらと光った。
 その狐裘は何枚かの狐の皮でできており、尻尾もついていた。袁術は側に座り、ほわほわとした狐の尻尾に触れた。

 孫策の片脚が着物の裾から感じられて、そっと袁術の手の背に触れた。
 彼の手の下はかすかに湿った柔らかな狐の毛に触れ、手の背ではつやつやとして冷たい皮膚に触れ、突然ぶるりと身を震わせた。
 孫策が訊ねた。
「ほら、とても寒いでしょう?袁叔はまだ酒は要りますか?」

 袁術は立ち上がり、ほどなくして戻ってきた。手には二つの透明に近い杯があり、その中には血の如き紅い酒が満たされていた。
 彼は一つを孫策に渡した。
「これは西域からの美酒だ。葡萄から造られている。相当珍しい。中原でもめったに見ない」
 鮮やかな葡萄酒は杯の中で揺らめき、夜光の壁にぶつかり、香りがこぼれた。

 袁術はこのとき四十ばかり、養生は適度になされ、身体も強壮である。彼とて武術を習い、戦場を経験していた。自ら戦場で敵を殺すことはないが、黄色の砂漠の戦場と血生臭さは司空といえども見慣れている。男というものは共通して殺性と欲望があり、彼も当然持っていた。
 いわんや酒が入っていて。
 彼はすでにもう待てなくなっていた。

 孫策の肌も暖まってきた。彼の衣服は腰の高さまで押し上げられた。銀色の毛皮はまだ背にあり、動きによって光が煌めいた。まるで羽を広げて飛ぶ鳥のように。

 これはもう夢ではない。そして脅しでもない。幼虎が自ら臣従して、成長しきっていない爪を収めているのだ。
 今回は、袁術が自分が獣になったと感じられた。


 ことが終わると孫策を胸に抱いて、鮮やかな美しい唇に残る酒気と香りを手を伸ばして拭った。
 幼虎は彼の手指を一齧りし、袁術を押し倒して、その上に跨がった。両手は彼の枕に押しつけて。

 彼の目から緊張と畏怖を見て取れて、孫策は彼に向かって笑った。唇を舐める。
「袁叔叔、怖がらないで。この次はあなたを殺そうとはしないから」
 彼の髪は袁術の顔にかかった。擦れてくすぐったい。春の花が咲いたような顔を近づけてきて、小声で囁く。
「安心して。わたしもあなたに興味はありません」  
 早朝袁術は侍女にお湯と新しい衣装を用意させた。冠から帯から靴下まで一揃いあった。
 孫策は寝台に寄りかかり、袁叔叔の膝の上に脚を乗せ、靴下を穿かせていた。
 袁術は彼の踝を撫でて、ふくらはぎに暗紅色の傷跡があるのに気づいた。治りかけのようだ。前には気にもしていなかったので、どこでつけた傷か尋ねた。
 孫策は顔を傾けて彼を見つめた。
「袁叔わかって聞くのですか。戦報には全部は書けません。祖郎はわたしの馬の鞍に斬りつけてきました。まともにはくらいませんでしたが、ちょっと怪我をしました。触らないで。まだ治っていないし、ちょっと痒い」
 
 彼の心は突然少し軟化した。
 少し軟化した後、最低の所までわずかな間に押しつぶされた。
「そなたの父の旧部下の三千のうち、まず千を返そうぞ」