策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

よちよち漢語 21 亮瑜啊亮瑜先生「伴君左右」

 蜀の建興五年、諸葛亮は後主劉禅に「出師の表」をさし出して、北伐を開始した。
 周瑜は櫛を入れながら、霜が混じったような髪を手にしていた。鏡で向かい合う人は薄く笑っていた。
「わたしはすでに寿命が近いのかな?」
孔明は今年で四十七だろう」
「公瑾は昔から変わらぬ美貌で、わたしはとうに老けました」
 諸葛亮はあいかわらずうっすらと微笑んでいた。
「この数十年の年月、わたしも孔明と一緒に過ごした」
 周瑜も笑うと部屋に春風が吹いたようだった。
 諸葛亮は笑って周瑜のやや冷たい手を握った。周瑜ももちろん握り返した。
 城内の桃の花が咲いていた……また一年春が来た。

 蜀の建興十二年諸葛亮は再び北伐し斜谷に大軍を出兵し、五丈原に兵を屯田させ長滞陣するかまえだった。
 八月二十八日、諸葛亮はベッドの側に座っている周瑜に小声で囁いた。
「公瑾、わたしの寿命はここまでです」
 周瑜諸葛亮の困ったような顔を見て、ぼんやりと初めて彼と出会ったときのことを思い出していた。あの時の孔明は若くて意気盛んで、今は状況が変わってしまった。
 周瑜の隠しきれない暗いさまを見て、笑いを禁じ得ず彼の手を握りたいと手を伸ばしたが、全身の力が失われていて力をいれることが難しい。周瑜が気づいて、急いで諸葛亮のかさついて痩せた手を握った。
「公瑾……あなたはわたしの側に何十年も縛り付けられて恨んでいませんか?」
 疑いでもなく、驚きでもなく、諸葛亮は一つ疑問を口にした。
孔明はわかっているだろう」
 周瑜は諸葛亮の老けたけれどかえって爽やかな目を見て笑った。
「わたしは公瑾の口から聞きたい」
 五十を越えた老人が子どものようにわがままをいう。
孔明は酒を持ったのではなく、腹まで飲み込んだのではないか」
 諸葛亮の少し疑うような顔を見て周瑜はそっと笑った。
「辛くて芳醇……味わったのだろう」
「後悔はない。かまわない」
 なにがかまわないのか、かえって口には言い出せなかった。諸葛亮はついに薫香で周瑜の顔がぼやけて見えなくなった。そっと目を閉じた。

「あの日の空を飛んだ灯りのように、孔明によって握られているのではないだろうか」
 それならわたしもそなたをつかんでいようか。
「わたしはここにいる。それはあの文字の束縛によってではない」
 周瑜はだんだん冷たくなる手を自分の胸元に重ねた。
「そなたのせいだ、孔明
 涙がついに落ちた。マホガニーのベッドの縁で涙はくだけた。
 諸葛亮の薄ら笑いを映していた。
 うしろから足音がした。慣れた手つきで周瑜を軽々と抱きしめてきた。よく知っていて喜びの滲んだ声が耳もとでごそごそと囁いた。
「これからは公瑾とわたしとで蠟燭を半分こしましょうね」
 周瑜は目を閉じてくすりと笑った。何が半分だ。