策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

よちよち漢語 七十二 需要愛先生「思為双飛燕」

四十九章 聯劉 劉備と結ぶ

 最近将軍府では驚くべき奇っ怪な事件が起こった。ずっと呉侯の信頼著しい騎都尉の周泰がなんと三ヶ月の俸給を召し上げられた。これに対して周泰本人はとても落ち着いていた。かれはとても忙しく、将軍府の内外の安全の責任を負っているだけでなく、護衛の軍の訓練もしなければならなかったし、人材を見つけて抜擢しなくてはならなかった。新たに護衛の軍からすこぶる才能がある何人かを選び抜いて、周泰は特にこの数人を集めて訓話をした。一通り話した後に、周泰はこの数人はボディガードの重責を果たせると思い、内心満足した。それから、もう一つ問題をはっきりとこの者達に話さなければならない。
「最後にひとつ問題だ。君たちに尋ねるが、もし主公が君たちに大都督をなんとかせよ、と言われたら。きみたちはどう対処する?」
「それは……」
「主公がまさかありえないのでは?」
「大都督は主公が孫家の人とおっしゃっています、主公に限ってありえないでしょう 」
「うるさい。直接答えよ!」
「うーん……主公の命令は必ず執行しなければならないし」
「そうだな。われわれは主公の護衛、もちろん主公の命令に従う」
「そのとおり!」
「ふっ」
 周泰は冷笑した。
「君たちは、やはり若すぎるなあ。覚えておくがよい!もしほんとうに変事がおこったら、大都督が主公を脅していて身の安全が確保されるなら手を出してもいい。他にいつでも俸給を召し上げられたとしても、大都督に手を出してはならない。君たちがもし手を出さなくても、せいぜい主公に怒られるがせいぜいである。もしきみたちが手を出したなら、一つにはきっと必ず罰を受けることになり、ふたつめには、無実の大都督を傷つけたなら江東の罪人となり、みっつめには、主公を傷つけることになり、この罪は赦されることではない」
「え?なぜ主公を傷つけることになるのですか?」
「そうだ。道理にあわない」
「ばかもの!主公がいつも突然泣いたり頭を地面に打ち付けたりするのはだれのせいだと?主公がいつもねんごろにみなに尊敬して大事にするよう申しつけているのは誰だ?主公が毎日十七、八回は口に出す人は誰か?君たち覚えておくがよい。だいたい主公と大都督の間には巻き込まれないようにすることだ。もしもし巻き込まれたら、ずっと黙って見ていることだ。わかったか?」

 孫権は最近とても憂鬱である。孫権は最近非常に憂鬱である。どうして周泰までも自分の話を聞いてくれなくなったのか?しかし、孫権はそのことについてよく考えるゆとりもなかった。北方の時局もだんだんと緊張しており、江東の上空も雨雲が広がっていた。魯粛荊州から戻り、孫権にある人と繋ぎをつけたと話した。燓口に駐屯する劉備、劉皇叔である。魯粛がいうには、劉備は当陽、長坂で曹操の追撃を受けた。双方水と火のごとく相容れず、今曹操は軍を率いて南下しようとしている。魯粛は兵を率いる劉備と江東が会談し、連合して曹操に当たることをすすめた。
「その劉備はどのくらいの兵力をもっているのだ?」
 孫権は急いて聞いていた。
「およそ三万」
「少なくないな」
 孫権はあごをさすった。
「もし彼の助けが得られるのなら、もちろんとても良い」
「主公、この議は恐らく不適当でしょう」
 そばにいた周瑜が突然反論した。
「なぜ?」 
 孫権はわからなかった。
「まさしく古人の言うところの『道同じからざれば、相い為に謀らず』(*論語)。わたしが知るところによれば、劉備は長年あちこちで奔走しております。ずっと漢室の正統の看板を上げ、その志は高く、その心は測りがたいものです。北方にいるときには、曹操は『天下の英雄はただわしと君のみ』と言ったそうで、見るからに同類です。わたしはこの者の勢力を拡大させるべきではないと思います。虎を養うが如き将来の災いを蒙らないためにも」 
「しかし……公瑾」
 孫権はため息をついた。
「あなたも知っているだろう我々江東にはとても多くの豪族が自軍を持っていて、その部曲もわしに貸して使わせない。朝堂で彼らはみな曹操に降れとそそのかすかもしれない。万一曹操が襲ってきたら、兵士が少なくては、これは一大事だぞ!」
「主公、劉家と連合してもいいでしょう。ただし乱を起こさないよう注意が必要です」
「公瑾よ」
 魯粛が我慢できずに話し始めた。
「皇叔は仁徳があり、心が広い。きみは警戒するべきではない。きみも皇叔と出逢ったらわかるだろう。これは信義の人だと」
「信義の敵は尚更生かしておけません」
「……」
 魯粛は黙り込んでしまった。
「しかし、三万の精兵は確かに少なくはありませんね」
 周瑜は低い声で呟いた。
「そうですね。彼らが江東に来たら又、相談しましょう」

 劉備はまず来なくて、先に江東に来たのは劉備使節、軍師諸葛亮だった。諸葛亮と言えば、江東と少し縁があり、その兄の諸葛瑾孫権に仕えていた。諸葛亮は来ても自分の家の兄には会わず、直接魯粛と将軍府にあいさつに行った。孫権は、彼の姿が俗っぽくさがなく、言葉は鋭く、正々堂々と話して滔々と途切れない様子を見て、すぐさま言った。
「諸葛先生、あなたは江東に来た方がいいんじゃないか」
「……」
 諸葛亮は内心あなたとわたしは曹操に対抗する大業について話していたのに、あなたは何も言わずにいきなり人材のスカウトか、それはあんまりにもひどいのでは。
「呉侯のご好意ありがとうございます。わたくしと皇叔は魚水の約束がありますから、ほかのところにお仕えすることは考えたこともありません」
「魚水の約束?」
 孫権の目は突然光った。顔には興奮の色がありありと浮かんでいた。
「おお、わしはわかった。わかったぞ」
 揉み手をしながら言った。
「そうだ先生、わしは一つ教わりたいことがあるのだが」
「呉侯、どうぞ何なりと」
「その、劉皇叔、彼はあなたの主公となるのに、そのなんだ、ん、どうやってあなたに気持ちをつたえたのか、そしてあなたに魚水の歓(恋人間の気持ち、性生活)を受け入れてもらったのかな?」
「は?」
 魚水の歓?どうして聞いていることの意味が合わないのだろうな。
「はぁ、……皇叔はあばら屋を三度も訪ねてこられました。その誠意に天下は感動するでしょう。わたくしはただの田舎者です。どうして皇叔のご厚意を無碍にできましょう」
「三回でいいのかぁ」
 孫権は下唇を突き出した。
「わしは百回しても、まだ効果がないぞ。どういうことだ」
 あなたさまのどこに道理がありましょうか。諸葛亮は苦笑いした。内心この呉侯は馬鹿のふりをしているのか。われらとどんな盟約もしないつもりなのか。わたくしはなにか他の方法を考えなければ。
 将軍府を出た後、諸葛亮はとても切実に魯粛に言った。
「子敬、わたくしはたった今ついたばかりです。助けてくださいね。よろしくおねがいします」
「それはもちろん。ああもちろん」
 魯粛は答えた。
「主公は何かおっしゃっていましたか?」
「ええ、あなたのところの主公は魚を食べるのが好きなようです」
 諸葛亮は羽扇をゆらゆら揺らした。
「なんの魚を食べると?」
「水の中の魚ですよ、子敬よ、まだそとは明るい。都督府に連れていって紹介してくれませんか?」
「それはもちろん行こう」
 魯粛は頷いて、馬車を急かして都督府に向かった。