策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

よちよち漢語 六十二 需要愛先生「思為双飛燕」

三十九章 一戦成名 一戦して名を成す

 春が来ても孫権の子は見られず、かえって災いがやって来た。報告によれば孫策の旧部下の盧江太守の李術が孫権に反抗し江東から逃げ出した人をとても多く収容しているという。孫権は聞くなり大いに驚いた。李術は孫策の元部下といえど、実際は孫氏に臣属したわけではなく、初めは孫策に負かされからやっと孫策に従ったものだった。多くの兵を抱え、権勢をたてに横暴に振る舞っていた。小覇王の威名に一時的に恐れをなして雌伏していたものの、孫権が呉侯の位を継いでから孫権に対して不満を露わにするようになった。
 孫権は知らせを聞いてしばし迷ったのち、李術に手紙を出した。反乱した者たちを送還してこい、と。李術は返事を書いてきた。徳があれば帰るだろうし、徳が無ければ反乱される、帰還させるわけにはいかない。孫権は烈火の如く怒り狂った。あいつはぼくを徳がないといっている!しかし、李術は普通の人とは異なっている、一つは彼は朝廷の任命した官僚なのだ。そして曹操とよく付き合いがある。二つ目には彼は三万の重兵を握っており、晥城という要塞に立て籠もっている。普通の地方長官の比ではないのだ。
 孫権は李術を取り除く決心を下した。ただし、彼とて馬鹿ではない。自分が盧江を攻めたら、北方にいる曹操が兵糧を援助する道を開くだろう。これにはなすすべがない。
「あぁ、やつらはみんなぼくが若すぎるからいじめるんだ」
 孫権周瑜にむかってため息をついた。
「もし、兄上がいたら、こんなことにはならなかったのに」
 周瑜はそれを聞いて、顔色がちょっと暗くなった。
「主公、李術は殺さなければ成りません。さもなければ大乱は必須」
「ぼくはわかっている。みんな見物にして待っているんだ」
 孫権はぷりぷりと怒って言った。
「今日は盧江、明日は建業か。恨むよ!ひどく恨めしい!しかし……」
 孫権は背中に手を回して、そぞろ歩いた。
曹操はもし李術を援助したら、どうしよう?」
「これを断ちます」
「どうやって断つの?」
「これを離間させます」
「なるほど、あの李術は曹操の所属とはいえないしな。やつは兄上の死後、曹操とひそかに結託しているだけではないか。公瑾の言うことはもっともだ、曹操は彼を信じるかな?我々は李術と曹操のみぞを探し出さねばならない。それを利用する」
「李術は当年かつて厳象なるものを殺しました」
 周瑜の唇の端がややつり上がった。
「厳象はもとは曹操が任命した揚州刺史です。就任中に李術に殺害されました。主公はなぜこのことにもっと注意をなさいませんか?主公……主公は何をお考えですか?」
 周瑜孫権を見てじっくりと話していたが、突然立ったままぼーっとしはじめたので、我慢できずに問うた。
「公瑾」
 孫権はちょっと驚いて言った。
「兄上が亡くなられた後、あなたが笑った顔をみていなかった。今さっき笑ったね……」
「……」
「でもちょっと陰険な笑い方だった」
「……」
「あなたはさっきなんと話したんだっけ?おっ、そうだ、厳象!あの厳象は曹操の腹心?」
「そうではありませんが」
 周瑜は首を振った。
「しかし、厳象は荀彧が推挙した揚州刺史です。荀彧が何者かは、主公はおわかりでしょう」
「おお……わかっている!わかっている!」
 孫権は力強く頷いた。
「荀彧は曹操の、公瑾が兄上における立場だろう。もし、公瑾が推挙した人材を殺したら、兄上は必ずこれを攻撃する、曹操もまたしかり、ハハハハ!」
「……」
 周瑜はしばらくして抑えきれずに反駁した。
「主公、荀彧は従軍しません」
「あ?」
「それじゃあ誰が従軍するのか?」
郭嘉郭奉孝です」
「あぁそれはぼくも知っている」
 孫権は真面目くさった顔で言う。
「だから曹操はあっちこっちと目移りして、まったく移り気だ」
「……」
「ぼくが荀彧に手紙を書いて……」
「主公、あなたは曹操に手紙を書くべきです。あなたが荀彧に手紙を書いたらよけいな嫌疑を招くことになりますよ」
「ぼくはそんなつもりはないよ」
 孫権はしきりに手を振って否定した。
「ぼくは荀彧なんて会ったこともないし、公瑾はどこに行くつもりなの」
「主公が思ったところに行きますよ」
 周瑜は泣くに泣けず、笑うに笑えないで言う。
「私が言うのは曹操は疑い深く、あなたが荀彧に手紙を書くよりも直接曹操に手紙を書いた方が良いのです。厳象が李術に殺された一件を教えて、これを我が軍が李術を討伐する根拠となすのです。荀彧としては、厳象は彼の友人ですから、彼がどうして李術が厳象を殺した事実を忘れられましょう、かれは勿論曹操の面前で主公のことを取りなしてくれるでしょう」
「言うことはもっともだ。わしは目の前が明るく開けた思いだ」
 孫権は明らかにとても喜んだ。
「そうだ、しかし話のはじめ、当初李術はどうして厳象を殺したのかな?」
「えっ……」
 周瑜は囁き声で話した。
「はじめはですね、これは討逆将軍の意思です」
「お兄ちゃんも厳象の死を願ったのかぁ」
 孫権は口を噤んだ。しばし経ってから話す。
「公瑾、我々は悪者なんじゃないか……」
「……」
 このあと、孫権は先鋒を晥城に陽動攻撃させた。曹操ははたして橋を撤去して路を断ち援助せず、助けには来なかった。そこで自ら兵を率いて出兵することになった。周瑜を司馬とし、ぞろりぞろりと出発した。晥城は守りやすく攻めにくい上!李術は三万の重兵を抱えていた。数ヶ月をかけて強襲して晥城を攻め下した。
 孫権は一戦して名を上げた。江東の皆の者もやっとまじめに意識した。孫策の弟の孫権はほんとうに呉侯の位を継いだのだ。今かれが江東の覇主で不服しない者は李術のような結末になるのだ。
 しかし、孫権は晥城を奪い返した後、曹操の使者がやってきた。言うことには、呉侯は朝廷のために害を除いた。この義挙はすでに朝廷に尽くしている。どうして子どもを遣わして入朝させ忠心を示さないのだ?
 孫権曹操の手紙を読んでから、使者を召して言った。
「まさか曹丞相がぼくより焦っているとは」
「なにを焦っていると?」
 使者はちょっと茫然としていた。
「子をなすこと」
 孫権は言い含めるように言った。
「ぼくの言うことを曹丞相に伝えてくれ、仲謀の子はまだ生まれていない。でも、きっと必ず生まれるから。必ず生まれるから。急がないで」
「……」
 半月後、同じ使者が又来た。今回はちょっと怒りで前後の見境がなくなっているようだった。みたところ孫権の話をそのまま伝えて曹操に罵られたみたいだ。怒り心頭で孫権に話しかけた。
「呉侯の子はまだ生まれずとも、ただし、討逆将軍の一子がいるでしょう。どうして許昌に遣わして陛下の側仕えとなさらないのですか」
 孫権は眉をしかめた。
「使者の方は先に客館でお休みになるがよかろう、このことはよく考えさせてくれ」


*第一人称の我と孤が入り乱れています。ぼくと言ったり、わしと言ったり。新任ぽいですね。