策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生32

「上元」

 袁術は出かけるとき最も前後に従者を無数守り囲まれるのを好む。
 さらに刺客の事件からそれほど経っていなくて、警護の衛兵はまた一層厳しくなった。群臣と提灯を観賞するといっても身近な文武の腹心数人である。他の者は城頭で少し見物して、簡単な褒美を貰い直ぐに帰る。

 孫堅の元部下の数人はその他の人達とはぎりぎりで入れず、挨拶の言葉を交わし、早々に下がった。
 袁術孫策の袖を引っ張り、笑いながら言った。
「徳謀、わしは策児をそなたに託す。この度は盧江に征くのに、必ずや守って、また傷など負わせぬようにな」
 程普は頭を垂れてはいと言い、振り帰って城楼を下りた。韓当、黃蓋もみなその後に従った。

 三人は十数丈歩いて、やっと侍衛からの囲みから脱することができた。吐き出した息は白く夜の寒さがはっきりと見てとれた。
 韓当は憤って言った。
「袁公路の人となりはなんとまぁおごり高ぶってうんざりする。我らが小将軍の成長するのを見守ってきたのだぞ、どうして彼が託すなどと言える?」
 彼らが振り返った時、孫策は錦衣に玉冠、高い城頭で立っていた。背後には灯火が輝き天上の星や月の輝きを覆うようでもあった。
 黃蓋の性格は気性がまっすぐで、さらに怒っていた。
袁術は孫家の子どもを彼の養子と望んでさえいる。恩寵はかくの如く、実の子よりもしっかり取り囲んでいる」
 程普は小声で囁いた。
「公覆口をつつしめ。別の場所で改めて話そう」
 韓当が不思議そうに言った。
「どこへ行くって?」

 向かったのは孫策の屋敷で、意外な人が先に着いて彼らを待っていた。
 兪河は自ら門に出てきて、使用人達は皆すでに提灯見物に出かけたと言った。黃蓋は屋敷の広間にいた人物を見てびっくりした。
「君理なぜここにいる。もう戻ってきていたのか?」
 
 正月前に孫策が怪我をして、屋敷に戻った後、孫権はお兄ちゃんをおいてゆけず頑なに正月までぐずぐずしていた。やっと朱治が母の元へ送っていった。朱治はこのとき四十近く、跡継ぎがいなくて、孫策は自ら書状をしたため、厚く礼物を用意して、朱治が曲阿に戻ったときに姉の子を後継に迎えていた。

 黃蓋は尋ねた。
「旅程は順調だったか?曲阿の城中はどうだった?」
 皆の者が座ると、朱治は話し出した。
「曲阿は劉繇の手の中にあれども、損害はない、我らに難癖をつけることもない」
 程普はしばし沈黙した。
「劉繇は自ら正道を命じ、王室の後裔でもある。決して孤児や寡婦を痛めつけるようなことはないだろう。策児は前もって考えることは周到だ。幼い弟に烏程侯の位を継がせた。無用の名号とはいえ、畢竟朝廷に封じられた位だ。今呉氏と孫氏の軍が歴陽にみな撤退しても、孫家の女子どもは曲阿に留まって無事でいられる」
 朱治は頷いた。
「さらに呂子衡と門客数百人が守っている。劉繇も易々とは手出しできまい。わたしもまた百人近く連れてきた、思うに今のところは無事だ」
 黃蓋は言う。
「わしはわからん。すでに開戦しておるのに、なぜ早くに家族を督軍中郎将のもとに連れて来ないのか。劉繇がもし急に迫ってきたら、我らはどうするのだ?」

 門外から誰かが答えた。
「それはまさしく言い訳なんだ」
 孫策は門を開けて入り、手を振った。
「皆の者は我が父上の兄弟、わたしも叔叔と呼ぶ。どうしてわたしのような後輩に遠慮することがある、座ってくれ」
 兪河が酒を運んできた。孫策がまず杯を捧げた。
孫策はここにおります。まず各叔伯を敬して一杯」

 彼の声は明朗で、容貌は美しく、身にまとうのは袁術から贈られた裘だった。そのように手の中の酒器をこねて、口もとに笑みを浮かべた。まさによく見通した大胆な計算があった。
「いま叔父上、従兄はみな歴陽に陣を撤退させている。わたしには勿論理由がある。筋道立てて袁公路に派兵することを求めるのだ。わたし自らに兵を率いさせて、再び丹楊に割拠する」
 韓当が尋ねた。
「袁公路は盧江太守の位を許さないのですか?」
 孫策は一笑した。
「義公今日劉勛を見たか?袁術の返事は、何度どこに落ち着くものかわかるか?しかしながらわたしの本意は、もとから盧江にはない」
 彼は兪河を手招きした。
「食べるものがあったら、早く持ってきてくれ。薄いスープなんか体裁ばかりのものは許さんぞ、腹が減ってひどい。わたしが江都にいた頃、張子綱をまず訪ねたとき、程公は一緒に行ったな。当然我々が考える計策もよく知っていよう」

 人々の目は程普に集まった。彼の一字一句ゆっくりと語られるのを聞いていた。
「袁揚州よりまず兵を求め、丹楊の叔父と力を合わせて、各地を転戦し、呉会の地に割拠し、父の仇を報じ、朝廷の外藩となる」
 驚く者はなく、却って会心の笑みを見せていた。

 孫策朱治に微笑みかけた。
「君理お疲れさま。また息子さんを危険に晒すことになって申し訳ない。これからは権弟と一緒に張子布に学ばせる」
 朱治はお礼を言った。杯の酒を飲み干した。
「お心遣いには感謝いたします。中郎将の書状も持って帰りました。意思は変わりませぬ」
 孫策は頷いた。また程普らに振り向いた。
「程公はこのたびわたしと盧江に向かう。我らは三月以内に城を攻め落とす。その他の我が父の元部下はおのおの気持ちはどうなのか、義公と公覆に細心の注意をよろしくお願いしたい」

 彼は灯りの下で、衣服は華麗で、姿勢は余裕があり、目を細めた姿は錦織に刺繍された猛虎のようだった。
「江東、オレは長いこと江東に帰っていない」