策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生36

「尋仙」*この章は難解でした。

 医官袁術の脈を触れて笑って言った。
「袁公ご安心ください。何でもありません。ただ今は昔とは違います。夏に入れば、天気は甚だ暑くなります。熱毒は少し気が塞がり憂鬱なことがあります。いささかだるさを免れません。発散されるのがよいでしょう」

 またさっとその他を診てみると、事細かに周りの侍従に言いつけた。天気は暑いけれど涼しすぎるのはよくない。毎日多く水を飲み、氷は少なくし、日光によく当たり、汗をかいて、熱毒を体外に排出することです。

 孫策は笑って言った。
「明日は端午競艇の日です。袁叔は観戦に行くのでしょう?それでは日にとてもさらされるでしょうね」
 医官は手を振った。
「孫校尉、激しい日に当たるのは、やりすぎです。袁公は庭で熱さをしのぐのがちょうど良いでしょう」

 孫策は加冠して字を付けたといっても、袁術は依然として元の呼び方を使っていた。
「このようだから、策児行って来なさい、袁叔は屋敷の中でそなたの勝ちをまっておるぞ」
 侍女が馮氏がお見舞いに来たことを知らせた。孫策は微笑んで立ち上がった。医官に座るよう示して、自分は下がりますと告げて、袁術の寝室を出て行った。

 初夏の花が盛りで、庭は濃い緑の影に満ち、庭の垣根に一棚の薔薇がかかっていた。灼熱の太陽の元で、一条の光輝く河のようであった。
 馮氏はたっぷりとした花影の中に立ち、衣装はあっさりとして姿は美しく、背後に二人の侍女が着いていた。
 孫策は彼女を見て、腰を浮かして挨拶した。
「夫人、ごきげんよう
 馮氏も微かに頭を下げ、礼を返した。
「孫校尉もごきげんよう

 彼女は二歩歩いて、また振り返った。
「孫校尉お待ちください。孫校尉は呉郡のお方ですか?」
 孫策は顔に意外な表情が浮かんだ。そして答えた。
「名義上で、父に従って先祖の祭祀に数回行ったのを除けば、ほとんど富春には戻っていません」
 馮氏は手の中の絹のうちわを揺らした。そっと「ええ」と呟いた。
「その……以前孫校尉と他の方が梅子真のことをお話ししていらっしゃるのを伺いましたの。よくご存知なのかしら?」
 孫策は笑って言った。
「亡くなった父はいろいろと忙しく、家ではほとんど母に育てられました。従者も多くは母が呉郡から連れてきたもので、よく当地の仙人の話をしていました。小さい頃から聞くことが多くて、それで知っています」

 馮氏は睫毛を伏せた。うちわの絹は上質で、青碧の江と山水が描かれている。
「多くの人が、仙人を求めるのは、茫漠として雲をつかむようで、無駄な骨折り損で、いまだ成功した者はおらず、人間の富貴の存在にはおよばないとされているのです。孫校尉はどう思われますか?」
 孫策は片方の眉をはね上げた。
「仙人となれない者が、いかに成功を知り得ますか?」

 馮氏は微笑んだ。
「またあるものが言います。仙人となりたい人が一日で成功し、持てる財産を放棄し、宝山に入って、振り返らない。身内や親友や愛する人にとっては、とても辛いことです」
 孫策も微笑んだ。
「夫人のお家は家学が淵源で、博識強聞です。どうして夫人一人が幸せを得て、その一族のみなさままで幸せにならないことがありましょうか?一族が幸せなら、その主人も栄光は無限でしょう」

 馮氏は頷いて笑った。
「孫校尉のご指摘、ありがとうございます。わたしは仙人の道に通じていないけれど、かえって梅子真の逍遥がとても羨ましく思えます」
 侍者が急いでやって来た。孫策に報告する。
「程普殿、黃蓋殿ら、みなさま外で校尉を長くお待ちです。言うには早くご相談なさりたいそうです。明日の準備のことだそうです」
 孫策は言った。
「夫人どうぞお入りになって。袁公はおそらくお待ちになっています」

 孫策の歩くのはとてもゆっくりで、なにか考えているようだった。門外について、程普黃蓋が待っていた。少し話して、その一群は軍営の中へと向かった。
 彼は馬に笞をくれて、進み、突然振り返って小声で呼んだ。
「程公」
 程普は彼の後ろに着いていて、馬に乗りかかっているところだった。すぐに着いてきた。
「何事ですか?」

 孫策はさっきの今日の馮氏言ったことを話して聞かせた。
「程公はどう思う?」
 程普はしばらく考えてから、答えた。
「答えのない話で、方法を求めるだけで、決定的なことを言う方がいいですよ」

 孫策は身体をすっと伸ばした。日光の下で目を細めた。
「程公とその他の諸将は、我々がすべき準備をしよう。決定的なことを……」
 程普は息をひそめ、彼の話を待っていた。
 孫策は言った。
「オレには考えがある」

 彼は馬に笞をくれて、遠く軍隊目がけて走り出した。振り返って大笑いする。
「程公、皆の者、明日の競艇の試合は我々が必ず勝つぞ」
 皆おおーっと叫び、馬に笞をくれ着いていった。

*梅子真は梅福。
梅福は字を子真、九江寿春の人。わかくして長安に学び、尚書、谷梁春秋に明るい。郡文学となり、南昌の尉の補となる。後に官を去り寿春に帰った。しばしば県道上で変事を言った。皇帝の行在所の危急にはかけつけ、知らせ、すぐに報告した。このときは成帝の時代で、王鳳が大将軍に任じられ、鳳の朝廷で権勢をほしいままにした。京兆尹の王章はもとより忠直で、王鳳をそしった。ために王鳳に誅せられる。……元始中、王莽が政をほしいままにした。梅福はある日妻子を捨て、九江を去り、今には仙人となったと伝わる。その後、ある人が会稽で梅福に会ったが、名や姓を変え、呉門に卒したという。

※親切なスーパーアドバイザー八月さんより指摘を受けました。
馮氏は孫策のスパイとして入宮したそうです。だから、二人の会話は謎めいているそうです。
梅福の生きたルートがそのまま孫策の侵攻の道を示唆しているのでした。