策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生29

「銀刀」

 袁術は水中で指を洗い流し、五指をまた広げた。透明な魚たちが指の間を泳いでいた。軽く声を上げて笑う。
「策児も年を越したら二十歳だ、喪も明ける。わたしが叔父となって自ら加冠と字をつけてやろう、また容貌の優れたお嬢さんを探して、結婚させよう。そなたもわかったろう、なぜ正月の前に寿春に戻らなければならなかったことが?」

 孫策の呼吸はだんだんと静かになりつつあった。声音は低く掠れていた。
「袁叔どうぞ教えて下さい」

 袁術は指先で彼の肩のひきしまった滑らかな皮膚をなぞった。それから手やひじ、硬く痩せた筋肉を撫で、とても軽い触れかただったが、孫策の腕には痙攣を引き起こした。
「我が家は四世三公、民が帰すところとなり、すでに、漢の侯に封じられ将を拝しておる。まさに臣下を治めて天地を祭るのに相応しい。来たるべき日、わたしはそなたを義理の息子とする礼を行い、こうすれば、あれこれいうひともいなくなるだろう」

 孫策はしばらく黙っていた。
「袁叔は本当にわたしを養子にしたいのですか。それも天下の人に明らかに告げてまで?」
 袁術は彼の顎を持ち上げた。
「そなたはよくよくわたしの言うことを聞いておればよい。天下の富貴栄華、何でも袁叔があげられないものはないだろう?」
 孫策は息を吸った。
「わたしは栄華を求めません。ただ二弟を家に帰すことが望みです。正月の七日までに戻れば、家の母に長寿の山椒の酒を捧げることができます。わたしは長子ですが、常に側にいられません、ですが、こうすれば安心できます」
 窓の外はすでに丑の刻であった。袁術は彼の腰を抱きしめ、ぴったりとさらに張り付いた。
「それならば、そなたはもう袁叔を長く苦しく待たせるなよ」

 浴槽の石畳には座布団があった。防水のため上質の牛皮に包まれていた。その上には細かな水滴がついており、裸の皮膚が乗ったとき、かすかに冷たかった。
 自分の体の下の身体は暖かく、また長くお湯に浸かっていて、漆黒の髪も鮮やかな唇も、長く濃い睫毛も伏せていて、いまだ躾けられていない。

 彼は長い間孫策に会っていなかった、このときは飢えた人の前に積み上げられた山海の珍味と同様で、心中苦しさが止まず、焦って口にした。しかし、一方で美食の道を熟知しているものとして、一口で飲み込むのは、つまらなすぎた。

 彼は浴槽の縁の金の酒器を見て、手にすると中身はまだ残っていたが、すでに冷えていた。
 酒が一条の流線となり、赤裸々な肌の上を流れ落ち、胸と硬い腹の上を通り、下へ滴った。

 

 部屋の中の喘ぎ声がついに静かになり、孫策は彼の腕の中で、物憂げに薄目を開いていた。なんの気力も湧かない様子だった。

 袁術は彼の肩を撫でた。
「何か食べて、休むか?」

 孫策の答えを待たずに、手を打った。
侍女が入ってきて、入口に控える。頭は上げずに。
 袁術は言いつけた。
「鹿肉を持って参れ、焼いたばかりの、柔らかいものだ。酒も持ってこい」
 袁術はしばし考えて、呼び戻した。
「よい。この時間だ、酒は要らぬ。氷室で冷やした葡萄を持って参れ」

 しばらくして運ばれてきた。
 先ほどの侍女が椅子の前に跪き、鹿肉を均等に薄く切り、その上に磨りつぶした調味料を振りかけた。
 鹿肉はやはり柔らかく、香ばしい、冷やした葡萄は甘く潤う。
 彼は剥いた葡萄を孫策の口もとに運んで、笑った。
「わたしに奉仕させるのは、そなた一人くらいのものだ」

 孫策は気にかけることもなかったが、袁術も怒りもしなかった。頭を下げて彼の耳元に近づけた。
「そなた達兄弟は暫く会っていない。数日過ごして正月を迎えたら、わたしがすぐにしっかり守って曲阿に送ろう。陸康のじじいは重病でもういくらも持たないだろう。いまある包囲で十分足りる。そなたも気にかける必要はない。上元を過ぎてから、盧江へ戻れば良かろう」

 孫策がついに振り返って彼を見つめたとき、目の内に流れる閃光が映った。
 袁術は突然振り向くと、ほっそりとした白い手が鋭い銀刀をつかんで彼の胸元目がけて、まさに命を狙っていた。