策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

ヨボヨボ漢語 兔兔先生『双兔記』7

 その夜玉璧は輾転として眠れなかった。服を纏って起きたり、また眠ろうかとしてみたり、再び起きてゆっくりと帯を結んでいたら、誰かが話し掛けてきた。
「申し訳ないが、お嬢さん助けてくれ!」
 この声は小さくひそひそとしていた。まるで長いこと待っていて、彼女が身なりを整えるのを待っていたみたいだった。
「あなたはだあれ?」
 玉璧が訊ねた。彼女は自分でも大胆だと思ってびっくりした。少しも恐怖はなかった。
 するとまた瑠璃青の衣服がかすかに揺れて、表面に刺繍された天文雲気星座日月の金糸銀糸が灯りのない部屋の中でもはっきりと鮮やかに見えた。蠟燭もいらないほど輝かしい美しい顔も、飾ることのない愛おしげな眼も、まるでいつも夢に見ていた通りで……。
「あの妖しい道士はきみの妹を半年前に殺した。やつは妹にとりつき、今日はわざと騒ぎをおこして、きみのお父さんに清虚観の三十六人のバカを呼ばせて玉階小妹の幽霊を祓うといってる。あの三十六人のバカは全然たいしたことはないが、清虚観の呪いはすごい。どうかお嬢さん我ら兄弟二人を助けてくれ。この恩は永遠に忘れない!」
 そういうなり、古い画のように瑠璃青の広袖を飄々とはためかせ深々と揖礼した。
「兄弟二人?」
 玉璧は合点がいかなくて迷っていると、青い衣の少年はすでに見えなかった。目の前に青と白の二羽の兔がいた。青いほうは雄々しく、白いほうは雪にも似ていて、どちらも手のひらくらいでフワフワしていて可愛らしい。
 窓の外また道士が幽霊を祓うために鉦を鳴らしていた。二羽の小さな兔は有無を言わさず、そっと玉壁の袖の中に入った。
 玉璧は思った。家の中の裏庭は山に添って建築している。ある石の小さな洞が深山に通じているという。年長者達は言っていた。祖父は若いとき神仙にあったことがあると。神仙は祖父に将来この洞は仙人が修行することになると言う。かならず子孫に伝えてこの洞を守るようにと。以前家族は誰も信じなかった。こんな小さな洞仙人がどうやって入ったものか?今わかった。兔の仙人なんだわ!しかし、裏庭に行くには途中必ず道士のところを通らなければならない、どうしたらいいのかしら?
 玉璧が考えていると、袖の中から声がした。
「お嬢さん安心して。わたしたちは人の形にならなければ、あの三十六人の道士たちはわたしたちを見つけることができないんだ」
 この声は子どもの声で、さっきの瑠璃青の光から出た清らかな川の白波のような声ではなかった。
「これはきっと白い兔のほうね。でも、なぜわたしの思っていることがわかったのかしら……」
 玉璧は不思議に思った。
 長衣を着ると部屋を出た。若い道士に声をかけられた。
「こんな遅くに、お嬢様はどちらに行かれるのですか?」
 玉璧は空が白み始めていたのを見て、不機嫌に言った。
「あなたたちが騒がしくて眠れないので、裏庭を散歩してくるわ。妖しげなものにあったら、叫ぶから来てちょうだい」
 北の畑を通り抜け、東の庭を周り風の吹く竹林の後ろに小さな池があって突き当たりとなった。玉璧が袖を降ろすと、二羽の小さな兔は手毬のように転がり出てきた。彼らは前足の爪を立てていた。あたかも揖礼しているようである。それから小さな小さな石の洞にもぐり込んでいった。