策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

ヨボヨボ漢語 兔兔先生『双兔記』11

 ついに空が暗くなり、伯符は白兔を拾い上げ、ふっと息を吹き込んだ。白兔の丹田の長年溜めてきた力が蠟燭のようにじわじわと明るく燃えてきた。この小さな灯りが、一人の仙人の体の中にあれば肉眼でみることはまずできない。でも白兔は体がとても小さく、ちょっとの光で全身が透けるように明るく照らした。
 よくよく見ると伯符も驚いて声をなくした。白兔の内臓がきらきらと光って、気が本当に全身を巡っているのが体内で光りが流れるように見えた。ぼんやりと変幻自在に色が変わった。本来小さな臓器や脳髄骨などははっきりと見えないものだが、玉石瑪瑙のような珍しい模様が澄んだ光によって輝いていた。両眼もきらきらと輝く黒点に見えた。毛は雪のように白くふわふわとして、光りが中からにじみ出していた。
 伯符は何気なく呟いた。
「オレが灯籠になっても、こんなには綺麗にならないだろう!だいたいオレだったら兔の骨が見えてみんなびっくりするだろうな……」
 それから竹の枝に引っかけて、高々と掲げ、また近づけてみたり、手に寄せてみたりした。
 南徐の街は音楽が鳴り響き、人は織物を成すかの如く流れ、華やかな花形の灯りが色々と飾られていた。道路に延々と続いて出てくるものは、はっきりとはわからない。自分が妖なのか?それとも彼らが妖なのか?
 その実、白兔が灯籠となった灯りは一丈ほどを照らし、普通の人には見えない。ただ伯符の姿形がはっきりと照らされていた。人は瑠璃の灯りのようで、灯りは水晶玉のようだった。一人も妖しいと叫ぶ者もなかった。民草たちは不思議そうに眺めて、にこにこと指差した。ある若い婦人は突然喜んで近づき、白兔にふれて叫んだ。
「羊脂玉でつくっていると思ったら、ふわふわの毛だわ。とってもきれいな兔さん!」
 伯符は警戒して、法力の目を使って注意して見てみたが、普通の女性だった。伯符は安心して、彼女が満足するまで見物させた。
 青い袖を伸ばして灯籠を差し出し、長い通りを歩きながら脇目も振らず、いや目の中に全て収めているのか、まるで新しい街を攻略した将軍のようだった。あの妖しい道士に見つけられないかと緊張するだろうか?万軍に包囲されても何の恐れることがあろうか?活気が満ちていて、世の中の移り変わりを端倪するようでもあった。
 ……また平和な時間が過ぎた。人の世は濁った空気とたおやかな混沌とした繁栄に満ちている。だが、かえってなにも面白いものは見つけられなかった。記憶している前世の自分はそんなもので遊んだことはなかった。父上の死が早く、他の人のように喜び楽しい十代ではなかった。責任が重くのしかかり、群雄と相争っていた。できるなら永遠に遊んで、功を立て成功し、開拓彊土するように遊んだら……。

 前の店では赤毛で碧眼の胡姫が歌舞をしていた。後ろの店では油を入れた鍋に各種動物の肉を入れていた。もちろん兔もある。それから樗蒲、すごろく、玉女投壺、博打、闘鴨……。伯符にはなんとも面白くなかった。突然、ちかくのものが売り声を張り上げた。みるとたぎる湯の中に白い丸々とした小さな玉が煮られている。兔の灯籠を懐に入れると、五彩の光は遮られて天眼を持つものだけが光の玉が彼の全身を包んでいるのがわかる。店の主が伯符に器に団子を盛ってくれた。外側は餅米で、中は香ばしいごま餡が入っていた。伯符は非常に旨いと思いにやにや笑った。
(これはうちの賢弟にそっくりだ。洞のなかに石鍋がある。帰って煮て食べさせてやろう)
 そこで五十個おだんごを買って、布で包んで懐に入れた。
 それからひっそりと街を離れ、山道を通って洞へ帰った。