策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

ヨボヨボ漢語 兔兔先生『双兔記』10

 それから一瞬の間ともおもわれる時間が過ぎた。どれだけの年数が過ぎたかわからない。
 これらの年月、伯符と公瑾は日夜閉じこもって修行した。毎年正月の十五日だけ洞から出てちょっと遊んだ。それも林の中で虎を追いかけ回したり、豺狼をからかったり、野雉を撃ったり、木々の枝を飛び回った。伯符は敢えて人の形をとらず、天地の間の仇敵と争わないように、修行の成果を無駄にしないように注意した。
 その晩、青兔は洞の中で天にむかってひと呼吸をして、自分の修行している石の床に戻った。急に人の形をとりあぐらで座った。しばらく俯いていた。また突然小さな声で呪いを唱え、手を伸ばして空から銅鏡を取り出した。彼は灯りもつけた。まじめに、左、右とじっと鏡を見つめ続けた。白兔は自然と通じるところもあったが、全部はわからず声をかけた。
「兄上、ねぇ……」
「あの年人となれた時、お前を兔の姿で供とした。さきほど洞の入口で月を眺めた。我ら兔の類いは太陰を感じ取れる能力があるようだ。今日は正月の十四日だ。何年経ったかもあやしい。しかし数十年は経っただろう。オレはつまらない気分だ。明日は必ず京口、いや今は南徐だな、ぜったい街に行って遊んでやるぞ。でも、こんなに時が過ぎて、オレの姿も変わっていないかな?」
 白兔は気ままに笑った。
「天下で誰が知らないものか。きみは顔で功を立て覇業を成したんじゃないか!」
 白兔は石の巣の中から降りてきて、洞の中で体を動かした。
「歴史書を書く奴は皆殺しにすべきだ!」
 伯符は罵った。また小声で「元に戻れ」と言うと、銅鏡は見えなくなった。伯符は手足を石の上の布団に広げると内心思った。
(子明はまだ音信がない。もしあいつが側にいてくれたら、どれだけいいことか!公瑾は長年人の形をとれなくて、性格もなんだか子どもっぽくなってしまった。子明がいたら悩みも聞いてくれるのに。たとえ今は開拓拡土が不可能でも、世界を一掃する仲間がいれば、民草を悩ます妖邪を取り除けるのに……)
「寝るぞ」
と彼は言った。伯符は昔から眠れないことはなかった。すぐに夢を見ていた。人がまた小っちゃな青兔の形となり大きな石の床に眠った。
 白兔は彼の夢に集中した。それは長年よく見ていた夢だった。外では風がびゅうびゅうと吹き、兄弟は小さな木の洞で寄り添っていた。夢の中でほわほわと暖かく毛はもこもことしていて、白兔もその感触を覚えていた。白兔は兄上の側に跳んでいくことも彼の腹の上を枕にすることもできず残念に思った。左師匠が言っていたことを思い出した。寝るときにもいちゃいちゃとすることは修行の妨げになると。早く人の形をとれるように努力しなければならない。そして兄上の期待に応えなければ!そこで自分の石の住処の絹の敷物の上で禅修行に励みだした。
 次の日伯符は目が覚めて身なりを整えた。ちらと白兔をみると石の巣のなかで眠っていた。耳を引っ張っても動かない。言うに言われぬ怒りが燃え上がり、こっそり思った。
「昨日はっきりと人間のところへ遊びにいくと言っていたのに、こんこんと眠っていやがる。一人で放って置いてどうして安心できるか?わざと洞から出かけさせないつもりか!」
 伯符は突然ひらめいた。
「今日はお祭りの日だ、奴を兔の灯籠にして、ぶら下げて遊びに行こう。睡眠修行なんかさせるか、オレの勝手にさせてもらう!」