策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

ヨボヨボ漢語 兔兔先生『双兔記』9

 左師匠は丸いゴザの上に座り伯符に語りかけた。
「周将軍はまだ人の形を得ていないが、これはかつて内臓にケガを負ったからじゃ。まず仙術を修めないと、体に悪いじゃろう。しかし、彼は生まれつき才能があり、人の形を得ていないが法力はそなたよりも上じゃ。そなたが先に人の形を得たのは武功によるものであろう。将来は万人を相手に無敵となろう。そしてそなたの賢弟は正道の修行を重ね、百年後には人の形をとれよう。もし二人が一緒に閉じこもって修行すれば、そなたの功力で彼の傷を治せよう。さすれば、三、五十年で足りるやもしれぬ。しかし、むやみに方術を使ったり、お前達ふたりでいちゃいちゃとすることはならん。心を静め、修行にはげみ、一日も早く道を得るべし」
「でも、現在三十六人の道士達が我々を狙っているのです。どうしたら身の安全を保てましょう?」
 伯符が訊ねた。
 左師匠は、「灯台下暗し」と言い残すと、影も失せ座っていた丸いゴザもなくなっていた。
 「灯台下暗し」そういえばそうかもしれない。最も危険な場所が反して安全だとも言える。
 このとき白兔が口を開いた。
「あの玉璧、玉階姉妹の二人は我々と宿縁があるようだよ」
 そこで伯符は瞬間に決めた。
「お前の方が法力は高いというからには、お前の言うことを聞こう。さあ行こうか!」
 そして今洞の中で落ち着くと、伯符は実際わからないことがあった。
(明らかに左師匠は我らを洞に引き連れ、なぜ罠にひっかかるようにして、玉璧お嬢さんに助けを求めさせたのだろうか?)
 突然白兔をつかみ、眼を合わせた。
「おまえは法力も高くて宿命も見えるんだろう?言ってみろ。彼女たちが我々とどんな旧縁があるのか?」
「放してよ!放してよ!」
 白兔は手足をバタバタさせた。
「宿縁があるということのみわかって、どんな来歴がまではわたしもはっきりとはしないよ」
「おまえは見えてるのにわざと言わないだろう!」
 白兔を投げ飛ばすと、白兔は身軽にくるりと身を翻しそっと石の卓の上に降り立ち、おとなしく丸くなった。
 伯符は話しかけた。
「おまえが言わなくたってオレはわかっている。姉妹二人、まだなんと言うことがある。オレもわかってる。おまえがオレのために言わないことを!玉璧は確かに美人だった。時は移ろい、人と妖と隔たれ、どうして彼女に手を出せようか。男女の愛はオレにはすでに
興味の薄いものだ。ただ願うのは以前の江東の豪傑達を集めて、陰陽両方の世界で、英雄として覇業を成して、天下を我が物とすることだ!」
 熱い涙が胸の奥から湧き上がってきて逆巻き、思わず両眼が朦朧とした。白兔は呵呵と笑った。
「まだ英雄として覇業を狙い、天下をものとしたいの!わたしの話をきいてよ。本に書いてあるよ!」
「おまえは本当に薄情だ!」
 伯符はまだ話し続ける。
「玉階小妹は半年前に死んでいる。でも彼女の死の原因はお前でもあるんだぞ!」
 白兔はぼうっとしゃべりもせず、眼を細めて静かに蹲っていた。