策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生6

「反復」

 袁術は一瞬すこし意識が飛んでいたことに気づいた。
 彼は考えていた。自分を抑えきれないのはいつだったろうかと。 
 人に仕えられて長く、自分の手でなすことに関しては疎いと思われた。
 しかし、それもひどく刺激だった。

 袁術はまだ自分の衣服は脱いでいなかった。孫策は彼の太腿の上に伏せていた。横顔は首の弧線状を露わにしていた。見つめてくる目は茫然としていた。整った姿は柔らかくなり抵抗することなどない。唇の間から漏れる呼吸は熱気と酒気が少し少しずつ袁術の体内のかごに閉じ込められた獣を挑発していた。
 彼は袁術に挨拶に来たときに、表では鄭重に、もう喪服を着ていなかったが、頭の上のはちまきは交換していなかった。
 目に刺さるような白が、黒髪と一緒につやつやとした背中に流れていた。軽い呼吸とともに上下した。その下の腰の線は引き締まり高くそびえ立っていた。
 ずっと体に触れていて、孫策は若いけれど、胸や腹のあたりはしっかりと引き締まり、下腹部は少し柔らかかった。暖かくなめらかである。 
 
 袁術は年若い頃も、狩りが好きで鷹を飛ばし犬を走らせる日々はあの従兄と過ごすよりずっとさわやかだった。
 袁紹とは狩りで獲物を捕らえるときの快感は同じではなかった。袁術は自らの手で得た獲物に触れて、震える様や、失われていく体温、流れる鮮血、毛皮も暖かくてしっとりしていた。
 血気盛んなころ、彼は狩りで捕らえたばかりの生きた鹿を、その喉をかき切って熱い血を吸ったことがあった。
 同じような血がまた身体の中を熱くさせている。
 熱い身体は焦って身につけていた衣服を全て取り払った。



 孫策は低く呻いていた。
 精神は混乱していたが、痛覚はまだあるようだ。
 彼の手は錦織の布団をつかみ、また手放し、身体はもがこうとも力が足りないようだ。無意識に前に起き上がろうとして、また少しずつ引っ張られる。
 帳の中は途切れながらも池と新緑が風の中で起こすさざ波のような音に聞こえた、ゆらゆらとする容器の中から溢れ出しそうな音にも。

 袁術はしっかりと彼の腰を押さえつけていた。皮膚は汗で濡れ、つかんでいようにも骨が折れた。 
 しかし、力のある少年の身体は案の定更にすばらしく、締めつけるときは魂が奪われるかのようであり、揺らしてくる時には、押さえている指のあとが鮮やかに見えて血管が沸騰しそうだった。
 帳の中は狭くて小さかったが、鼻先では香りが混ざり合い、酒気、熱気ともに蒸発して胸に迫ってくる。

 一度上りつめてから、懐に抱き締めた。再び菖蒲の碗を飲ませる。
 薬が効いてくる前に、彼の描いたような眉目、艶やかな紅い唇、なかば睫毛に覆われた目には汗か涙かわからないものを帯びていた。微弱なあらがいには恥ずかしさと悲しみで傷ついている様子が見えた。
 満足できない。
 ずっと目の前には大小の光がでたらめに爆発していた。それから彼を抱いて一緒に暗闇に沈んでいった。

 袁術は目覚めたとき、いささかおかしな動きと音がしたように感じた。
 彼がまだしっかりと目を開けていないときに、まず、手を伸ばして手探りでつかもうとすると、あの暖かい彼に寄り添っていた身体はなく、再びの美しい夢を見ることはかなわなかった。

 彼は何もない所を撫でた。
 あの灼けるように熱い手が、自分の喉を締め上げた。
 若い男の子彼の身体の上に乗り上げ、締めつけると、彼は目がくらんだ。
 袁術は話もできず、フーフーと喉を鳴らした。

 見えたのはあの怒りに燃えた目、暗く燃えるような獣と同じ目だった。