策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

ヨボヨボ漢語 兔兔先生『双兔記』6

 青い衣の少年は銭塘についた。すでに月が柳の梢の先にあった。酒屋に入り慌ただしく夕食をとった。酒屋にいた人々が見ていると、その少年は懐から一匹の白兔を取り出した。兔は卓上に跳び上がり美少年と一緒に晩御飯にありついた。すこぶる不思議な光景である。
 酒屋を出ると、すでに灯籠市は始まっていた。火花が輝く、装飾した車と名馬、灯りの影がゆらゆらと動く、笑い声があふれた。まさしくにぎやかなることこの上ない。江南の一般的な豊かな様である。
「この銭塘はむかしの富春と全然比べものにならないな。とても繁栄している」
「言うなら江南の人は兄上を拝まなきゃならないね。兄上の江南平定があって、孫氏の百年近い経営開発があったからこそ、今日の江南の繁栄があるんだから。当初の呉会は多くの地方で断髪文身していたよ。この富春なんか兄上のふるさとだったけど、まだまだ田舎だったよ」
「うん。誰かが覚えているかな。将来はたぶん敵寄りになって、英雄豪傑を殺した無頼の徒の政権とかなんとかいわれるのか?」
「遙かに多い民の口をふさぐことができるわけないよ。後のことは将来の人に言わせとけばいいさ。わたしたちは心に恥じることはないんだし」
 二人で話しているうちに灯籠市から出て、銭塘江のふちについていた。ちょうど月が天に輝いていた。満潮の時である。月明かりのもと海水がほとばしり、千軍万馬の咆哮のようで波音高く、青い衣の少年は激しく興奮した。大声で叫ぶ。
「炎精が欠け、漢の道は廃れる、皇紀は緩み、政徳は従わず、悪人どもは盛んになり、民は寄るところ無し、赫赫たる武烈皇帝は飛龍を越える」
 白兔も続けて歌った。
「都にのぼり、霊威を輝かす、雷鼓が鳴り、旗が風に揺れる、乾衡をつりあい、地機を鎮める、勇ましい虎旅は羆にまっしぐらに走る……兄上、悪人どもに対して、われわれはどうすべきかな?」
 少年はそれを聞くと俯いた。
「なぁ公瑾、現在もっとも重要なのは、おまえが人の姿になれるようにすることだ」
 小さな白兔を懐に戻した。
「いくぞ。修行しよう。だらけるのは禁止だ」
 そう言うと、青い衣の少年は飛ぶように走り去った。