策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

よちよち漢語 五十六 需要愛先生「思為双飛燕」

三十三章 類公瑾者佳 公瑾に似ているものがいい

 孫権が建業に着いたとき、ちょうど将軍府は扁額をかけていて、うちも外も提灯を灯し五色の布で飾り立て、とてもにぎやかだった。天子の詔が五日前に建業に到着して、孫策を討逆将軍、呉侯に任じた。孫権孫策にあったときには、孫策は重厚な礼服から着換え、軍営に閲兵に行くつもりのところだった。
「お兄ちゃん、聞いたよ、公瑾に大きな屋敷を与えて、さらには百人規模の鼓吹楽人を与えたって、本当なの?」
「もちろん本当だ。公瑾は音楽が好きだしな。表面上遠慮していたが、実のところ内心では十分よろこんでいたみたいだぞ。あ、そうだ、夜に屋敷で宴がある。おまえも来いよ」
「ぼくはお母さんにご機嫌伺いにいかなきゃ、夜はお母さんの話し相手になるだろうから、ぼくはいけないよ」
「そうか、ならいい。仲謀よ」
 孫策は振り返り、にこにこと機嫌良く、上から下まで孫権を眺めた。見られた孫権は鳥肌がたって、我慢できずに言う。
「お兄ちゃん、何見てるんだよ」
「大きくなったなぁ」
 孫策は嬉しくてしょうがなかった。
「ぼくも十七だよ」
 孫権は呟いた。
「お兄ちゃんはやっとぼくが成長したのに気づいたの」
「オレはここ数年あちこちと戦争で忙しくて、おまえの面倒を見ることすらなかった」
 孫策は手のひらでパンと孫権の背中を叩いた。孫権は叩かれてよろけることもなかった。
「仲謀も今や立派に立つ大人の男だ。大丈夫が世に出るには家庭を持たねばならん。おまえも結婚してもいい年頃だ」
「け、結婚?」
 孫権はもじもじしながら答えた。ちょっとびっくりもしている。
「どうだ、おまえが考えている家があるなら、オレが縁談をすすめてやるぞ」
「あることはあるけど」
 孫権ははにかみながら話す。
「みんなぼくを見ようともしないみたいだ。あるいは見ても気に入らないのかも」
「ん?どこの女だそんな傲慢無礼な。うちの仲謀を気に入らないなんて、お兄ちゃんに言ってみろ、オレが責任持ってやってやる!」
 孫策は爽やかに笑い声を上げた。
「こ、この人はだめなんだ。その人はもう結婚していて……」
「おい、仲謀、それはダメだぞ」
 孫策孫権をちらと見て、かすかに眉をひそめた。
「おまえはいつから曹操みたいな悪い癖がうつったんだ。どうして□□が好きなのか」
 少し考えて言う。
「そうだな。おまえはまずどこの人妻か言え。もし適当なら、お兄ちゃんが奪ってきてやる」
「奪うことも考えたさ」
 孫権は小声で呟いた。
「もしお兄ちゃんが責任持ってくれるなら、ぼくは一つだけ要求があるんだ」
「ハハ、それはきっと天仙のような美人ってことか」
「かならずしもそうじゃない。ちょっとは天仙のような美女も見たけどそうじゃないんだ、お兄ちゃん」
「それじゃあ仲謀は名門のお嬢様を娶りたいのか?」
「出身はそんなに重要でもない」
「それじゃあ聡明で利口な子か?」
「あたまがよすぎてよく嫉妬するのも、要らない」
「……仲謀、おまえいったいどんな女の子がいいんだ?」
 孫権は両眼を輝かせて、ゴホンと咳をしてから、小躍りして言った。
「公瑾に似ているのがいい」
「……」
 孫策は無言である。
「……」
 孫権も無言である。 
 それから孫策は腕を伸ばして孫権の肩を抱き寄せた。十分に切実な声で孫権に語りかけた。
「仲謀、華奢で弱々しい女の子で公瑾みたいなのがいたら、みんなびっくりするだろう?おまえもっとよく考えてみろ、おまえが求めているのはいったいどんな子か」
 孫権は一心に集中した。しばらく俯いてから、最後に小声で、しかし、断固としてはっきりと繰り返して一言。
「公瑾に似ているのがいい」
 孫策は意味ありげに孫権を見て、ため息をついた。
「いいだろう」
 孫権は突然許されたみたいに言う。
「ありがとうお兄ちゃん。ぼくお母さんのところに行くね」
 それから煙のようにさっと逃げた。
 一ヶ月後、将軍府では再びおめでたいことがあった。討逆将軍の弟の孫権が謝氏を娶ることになった。婚礼は十分に立派に行われ、将軍府は再び提灯を釣るし五色の布で飾り立てられた。賓客は雲の如く多かった。
 夜になり、謝氏は百子千孫の子孫繁栄を祝福する吉祥柄の布団の上に座っていた。静かにに婿を待つ。頭のベールが取り払われた。謝氏は恥ずかしがりながら俯く。十分に優しい声音が自分に話しかけるのが聞こえる。
「顔を上げなさい」
 謝氏は勇気を出して顔を上げた。目の前には英俊な顔立ちの少年が見えた。これが自分の夫君なんだわ。お父さまが言っていたのは間違いない。立派な容貌をしているわ。謝氏は心臓がどきどきときめいた。けれども、夫君はちょっとおかしな感じで、なぜかはわからないけれど手に燭台を持って、灯りをわたしの顔に近づけてじっくりと照らしている。まさかわたしの容貌を検分しているの?
 訳がわからず悩んでいると、謝氏はこの顔立ちの整った夫君がしばらく驚きでぼんやりしているのに気づいた。そして突然凄惨な声で叫んだ。
「似ーーてーーなーーいーーよーー!」