策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

よちよち漢語 五十五 需要愛先生「思為双飛燕」

三十二章 連襟 姉妹の婿同士 

 翌年、孫策が会稽を統治していると、しばらくして孫権は一つの知らせを聞いた。周瑜の妻が昨年亡くなったそうだ。これを知ってから、孫権は昼夜兼行で孫策の駐屯地に向かった。
「お兄ちゃん、聞いた?周瑜が妻を亡くしたって?!」
「仲謀座れよ」
 孫策は明らかに機嫌がよさそうだった。目はずっと机の上の地図を見つめていた。あっさりという。
「聞いたぞ」
「聞いたなら、なんで急がないんだよ!」
「何を急ぐことがある。袁術は北方で帝を称するつもりだ。公瑾は天下の人々が共に袁術を討とうとするのに乗じて、南下してオレと合流する予定だ。身辺の家族に女がいないほうが煩わしくなくていいだろう」
「違うんだよ」
 孫権は額を滴り落ちる汗の粒を拭きながら言う。
「お兄ちゃんどうして気づかないのかな、公瑾は妻を亡くしたら必ず後妻を迎えるんだよ。彼は周家の次男といえども、正妻の生んだ子だし、周家の一族がどうして気にかけないことがあるだろうか、その時には我々には機会がないんだよ!」
「おまえが何を言っているのかオレはまったく聞いてもわからん」
 孫策は驚いて顔を上げ、孫権を見た。
「お兄ちゃん、考えたことはないの、周氏は北方の一族で、董卓に多くの家族を殺害されたけれども、家柄のよさはそのままだ。われわれ孫氏は低い身分出身、今彼はお兄ちゃんの側で心を尽くして補佐していて、二心をもたない。それはわれわれ孫家のよしみがなせるわけで、もし彼が後妻に江南の名門の女人、たとえば姑蘇陸氏の流れなどを娶ったら、彼はあなたのものではなくなるよ、お兄ちゃん!」
「んん?」
 孫策は半信半疑で地図を巻いて仕舞った。
「それはどういうことだ?」
「お兄ちゃんは一路ずっと攻め続けてきて、この土地の豪族はみんな心から臣従している、と言えるのかな?」
 孫策の顔は恐れの色もなかった。
「それはオレもわかっている。彼らがどうしようもないのも理解している。仲謀よ、悪人がオレに向かってきたり、屈服しないものはオレ達は殺す。好意的なものが向かってきたら、彼らを抱き込むんだ。オレはおまえに前にも言ったよな。多方面でオレを助けてくれ」
「うん。抱き込んで近づく、彼らと我々、結局は思惑が別々なんだ。お兄ちゃん自分の連れている部下を頼るんじゃないの。名門豪族たちが好むのは婚姻関係を結ぶことだよ。公瑾みたいな若くて才能があってかっこいい、出自もまたよいものが、妻を失ってまもないとなれば、いったいどれだけのひとが野望をいだくものか!彼は江東に来てあなたを助けるのに嘘はない。しかし、もし江東の豪族の娘を妻としたなら、今後妻の方に偏るのを免れない。豪族たちの地元への根の張り方は深いし、人材を引き抜く手段も多い。それでお兄ちゃんの股肱の臣下も別の一族の婿になっちゃうよ!」
 孫策は眉をひそめた。
「おまえはなにか噂を聞いたのか、周家に陸家から縁談があったのか?」
「ないよ。ぼくはこちらから対策を言っただけだよ。防がないとだめだよお兄ちゃん!」
「公瑾はオレを裏切らない」
「彼は裏切らないのは本当かも知れない、でも、裏切る機会も与えてはならないんだよ!」
 孫策はしばらく黙り込んだ。顔を上げて孫権をじっと見つめた。孫権は黙ってちょっと自分のほおを擦った。
「お兄ちゃん、ぼくの顔に何かある?何をそんなに見ているの?」
「ハハ」 
 孫策はちょっとバカにしたみたいに笑った。
「見たところチビ仲謀も大きくなったなぁ、おまえがここまで用意周到に考えてくれるとはありがたい」
「こんな大事なことだもの、ぼくはずっと周到に考えるよ」
「じゃあ言ってみろ、どんな対策がある?」
「ん……」
 孫権はちょっと考えて、きっぱりと発言した。
「妹を嫁がせる」
 孫策は今しがた飲んだばかりの茶を、その話を聞くなりぷっと噴いた。
「尚香はお下げ髪の幼児だ、どうして公瑾に嫁がせられるものか」
「そりゃそうだ。香ちゃんは小さすぎる」
 孫権はため息をついた。
「惜しいことに年が足りない妹だなあ。もし阿翊が女の子だったらちょうどいいのに」
 孫策は口許を拭いて、また一口飲んで、再度噴き出した。
「そうか、このことは後日また話そう。おまえは戻って良し」
 このあと、孫権は陽羨で聞いた。周瑜が居巣から南下して戻ってきて、孫策の転戦に従い、かれら兄弟二人は転戦の途中大喬小喬という姉妹をそれぞれ娶ったそうだ。孫策大喬を妾として、周瑜小喬を妻として娶った。孫権は思わず喜んだ。浮き浮きと側の周泰に話しかけた。
大喬小喬はどんな人かしっているかい?」
 周泰は首を振って知らないと示した。
「彼女たちは没落豪族の末裔なんだ」
「へぇ」
「公瑾が小喬を娶るのは家柄が釣り合っているし、お兄ちゃんの仲人も悪くない。でも知っているかい、喬家は江東に一人もいなくて、小喬が公瑾に嫁いでも、何の波風も起こらない。ハハハハハハ」
「小将軍……」
 周泰孫権がなぜ狂ったように笑っているのかわからなかった。でもついには我慢してなぜかと問わずにいた。いつも孫権について東奔西走して、周泰孫権が一人で馬車の中や書房で何を考えているのか知らないが、顔におかしな笑いを浮かべているのをいつも見ている。周泰は小将軍の度量は深く、前途は無限、しかし彼のこの笑いやピクピクとした痙攣はちょっと人をおどろかすよな、と思わずにいられなかった。
「幼平は知らないかもしれないが、ぼくは幼い頃周家に遊学して、公瑾の奥さんを見たことがあるんだ。あの貴族のお嬢様はひどくか弱そうで、当時からぼくは断言していた『命は長くない』って」
「小将軍は幼い頃のことを覚えていなさるのですか?」
 周泰はちょっと疑った。
「もちろん。ぼくはみな書き留めて、つねに故きを温ねて新しきを知るんだよ!」
「でも、わたくしめは大喬小喬姉妹は牡丹の花の如き美しさと聞きました」
 孫権は手を振った。
「きみは公瑾を理解していないな。彼は女人に夢中になったりしないんだ。牡丹の花の如き美しさといっても、公瑾はかっこいいだろう、お兄ちゃんだってかっこいいだろう?ないよ、姿形の美しさに意味ないよ」
 周泰は顔に黒線をうかべて孫権が頭を揺らしているのを見ていた。内心読書人というものは普通ではないな、話していることも測りがたくてわからないなぁ、と思った。良心に基づいていうなら、彼は孫権についてしばらく時間もたった。孫権の彼に対する心のこもった待遇は悪くなかったし、周泰も喜んで孫権のために命がけでつくすつもりだ。彼はこっそりとちょっと孫権のおかしな笑い方と話に心配をしていた。どこかしら変で、具体的にどこがおかしいとはいえないのだが、一点周泰に言えるのは、孫権の考えることは、普通の人と完全に同じではない!