策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

よちよち漢語 三十四 需要愛先生「思為双飛燕」

十四章 □□ (伏せ字でわからず)

 書房の中は静まり返った。孫権は戸を開けようかどうか迷っているとちょうど、宝剣が鞘に戻される音がした。続けて孫策の低く囁く声がする。
「公瑾、おまえはやろうとして決断せず、臨んで決断しないのは兵家の大いに忌むところだぞ……や、やめ、やめろ……」
二言三言叫ぶと、孫策は又、言う。
「このように奇襲をするとは、逆に正を以て合し、奇正相い輔けるの理……おおぅ……」
「義兄も奇正相合すをご存知でしたか?わたしは義兄は奇法しか知らないのではないかと。いつも正しくないですし」
「なんのことだか、オレは奇、公瑾は正、まさにピッタリじゃないか、エッチすれば無限の快楽……」
孫策!きみはデタラメなことをいうなよ!」
「わかった。デタラメはなしだ。まじめなことだけ話そう」
 孫策は黙った。
 しばらくして周瑜は堪らず尋ねた。
「まじめなこととは?」
 孫策は大きいため息を一つついた。
「ホントのことを言うとな、オレはおまえが新婦を娶って義兄のことをわすれるのではないかと心配していたのだ」
 部屋の中はまた一陣の沈黙が降りた。孫権周瑜がまたこの話を聞いて怒るのでは、うちのお兄ちゃんを殴るのではないかと思った。
 図らずも、しばらくの沈黙の後に、周瑜は意外なことにとてもまじめな調子で語り始めた。
「伯符、大丈夫が世に出るのに、父母妻子、親友知人、それぞれ本分というものがあるのです。わたしたちはすでに義兄弟となりました。一生同心です。どうして妻を娶って変わることがありましょうか?」
「おのおの本分があるというのは、オレは好きじゃないな」
 孫策は落ち着いた様子で語った。
「もし本分があるのなら、オレは公瑾を弟としてみていいのか、それとも妻としてみていいのかわからない。そんな細かい決まりにどうしてこの孫伯符が縛られようか……」
 書房内から孫策のうめき声がしばし聞こえ、その後低い声で続けた。
「公瑾は外見は温雅で優しいのに、内ではこんなに暴力的で良くないぞ、オレは身体か丈夫だから我慢できるけどな。おおぅ、うっ」
 何の痛みにか我慢しているのかわからないが、孫策は言う。
「オレは弟か妻か同輩か大臣か知ったことではないが、今日来たのには公瑾に言っておきたいことがあるからだ」
「ふんっ!」
「その話はふんっではすまない。周公瑾は永遠に孫伯符を愛すということだ」
「恥知らず!」
「孫伯符は永遠に周公瑾を愛す」
「この……」
 周瑜は突然声が出なくなった。
「早く、オレは言ったぞ。おまえも早く言え」
 孫策は催促した。
 孫伯符は永遠に周公瑾を愛す。
 孫権は部屋の外で聞いていて笑い出しそうになってしまった。お兄ちゃんはいつも冗談が好きだと言っても、孫権はそんな可笑しい話を聞いたことが無いと思った。孫権は内心思った。
(五歳以降こういう神にかけて誓うだとか幼稚な遊びはしなかった。きみとぼくは永遠にいい友達だとか、永遠に奴を許さないだとかのたぐいだ。これらに何の意味がある?考えが変わってきれいさっぱり忘れられるのに)
 孫権は密かに思った。
(公瑾お兄ちゃんは言わない。公瑾お兄ちゃんはうちのお兄ちゃんみたいにそんな悪ふざけはしない)
「周公瑾は永遠に孫伯符を愛す」
 孫権は考えていたら、周瑜の言っているのが聞こえて、にわかに座り込んでしまった。
 周瑜が本当に言っちゃった!しかもはっきりと、語気も丁重そのものに!
 孫策は喜んで言った。
「すでに宣言したからな。一生忘れるなよ。無論今後何事があっても、オレの話はおまえは忘れるな。自分が言ったことも忘れるなよ」
「義兄はいつからオバチャンみたいにうるさくなったのですか」
「成功して偉業をなすものは大事を遺さず、小事に拘らず。公瑾を得て偉業の一つを成し遂げた。ちょっとオバチャンくさくなっても気にするものか」
「義兄、まともなことを言ってください」
「もうおまえがオレを殴りたいぶん殴ったり、オレに話したいことを話したりすでにした。そうだな、義兄とは呼ぶな。伯符と呼べ」
「申し訳ないのですが、伯符の手を放してください」
「もう永遠に愛しているのだから、どうして手を放す必要がある?」
「まっ昼間から、わたしの屋敷には百以上の人が部屋の外にいるのですよ。きみ!」
「ああ、そうか公瑾は聞かれるのが心配なのか。それなら叫ばないように我慢すればいいだろ」
「放せ!」
「離さない」
「放せ」
「離すもんか!」
「あぁ……」
 何かが倒れる音がした。そして、唇と歯の絡み合う濡れた音とだんだん重く荒くなる息づかいが聞こえた。
 孫権はやけどしたみたいに両眼を見開いた。あわてて頭を仰け反り、じっとまっすぐにきっちりと閉められている戸を見つめた。しばらく驚き果てていた。孫権は再び耳を戸にくっつけようかためらっていると、全身をぶるっと震えさせるような抑えた□□な声が聞こえた。その微かに震える声音は語尾まで魅惑的で、掠れていて甘ったるく、いつもとは全く異なっていた。ただし、孫権にはこれは公瑾お兄ちゃんの声だとわかった。
 お兄ちゃんは何かを低く囁いているようで、孫権には聞き取れなかった。頭の中でワーワーとなっているのは、彼らのきっと今していることのせいだった。二年前記憶がふつふつとよみがえり、孫権は踵を返して逃げた。
 自室に逃げ戻り、戸を閉め、閂をかけた。孫権は戸を背にペタンと座り込み、両手で膝を抱えた。孫権にはわからなかった。どうして彼らはいつもあーなんだ!あの恥ずかしいことに何の意味があるのか。ずっとおしゃべりしたほうがまだましだ!本当にまったく理解不能だった。さらに公瑾お兄ちゃんが最中楽しんでいるみたいなのも。
 突然、孫権は自分の部屋の隅に、目をやった。持っている袋の中には絹の巻物が入っていた。それは以前、学堂で一人の同窓生が贈ってくれたものだった。その同窓生は学堂で一人に一つと言って、孫権にも押しつけてきた。孫権はどんなにか珍しい手本なのかと思ったが、開けてみると字は乱雑で、文章も不明瞭なので投げ捨てようかと思った。その同窓生はこれはいいものだといい、捨ててはならない、そして孫権によく読んでその良さをよく味わえとも話した。孫権は細かく一通り読むと、様子がわかってきた。書いてあるのはどうしようもなく汚らわしいことのようである。
 もらった当時の孫権はちゃんと読んでいなくて、袖の中に突っ込んで、その後どういうわけか、ずっと持っていた。
 孫権は内心ドキリとした。昔、この絹本を開いて見なかった。そして、今よくよく読んでみると、つまりは何の珍しいことでもなく、公瑾お兄ちゃんもたびたびふけっている快楽だった。
 白い絹本を取り出し、ベットの上で広げ、孫権は這って我慢しながら読んだ。思いもよらず読まなかった方が良かったかも。ちょっと読んで孫権の小さな顔はたちまち赤くなったり、白くなったりした。しばしば孫権の眼は絹本の上を動き、見るに堪えなくなってもまた我慢して続けて見た。昔も良いものと感じなかったものだが、今日はあの時と同じではなかった。孫権は初めの間のちょっとした会話、自分でも非常に具体的に連想できたさっきの書房の外から聞いた声、それとかつて遭遇した画面、当然それらは孫権が想像もしたこともないことで、さらにもう一歩進んだ……。

 夕方、正庁の食事どきに、孫権は俯いて、碗をかっ込み、三口、五口で平らげてしまった。
 孫策孫権の忙しない様子や、食べ終わった後何も言わずに立ち上がって去ろうとしたのを見て、調子が悪いのかとすぐさま訊いた。孫権はウンともスンとも答えなかった。孫策は前に立ち塞がり捕まえたが、手を振り払われた。
「ん?がきんちょが!」
 孫権は突然思った。お兄ちゃんの孫策ともまったく居たくないし、周瑜とも話したくないし、彼らふたりとも見たくもなかった。ついに呻いた。
「兄ちゃん、暑いよ、引っ張るなよ」
 孫策は鼻で笑って孫権が自室に戻るのに任せた。
 孫権は部屋に戻った後、再び白い絹本を開いてみた。そして、その苛立つものを巻いて袋に戻した。小刀を取り出して、竹簡に刻んださっきの見たことの一文を刻んだ。それは孫権にすこぶる深い印象を与えた。
『寂しさに耐えかね、ついに淫らな行為をなす』
 刻んだあとに孫権はちょっと考えて、またその一文の先に二つ文字を加えた。
『公瑾』