策瑜で三国志ブログ

一日一策瑜 再録しました。三国志、主に呉、孫策、周瑜について語ってます。基本妄想。小ネタを提供して策瑜創作してくれる人が増えたらいいな。

2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生43

「死路」下 彼は袁術の面前に立ち、明るく笑い、誹っていた。 「袁叔はまだ覚えていますか、当年オレが出征する前に、寿春の城南、淝水の上で、袁叔は楼船に乗り、舞楽を揃え、数多の臣下と名士を呼んで大きな宴を催しましたね?」 袁術は当然覚えていた。彼…

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生42

「死路」上 火の海は果てしがなく、楼閣は倒れ、材木は焼かれて灰となり飛び散り、熱波が顔を直撃した。わずかに甘さが混じる煙と埃の中、花の香りは絶えず、まさに満開の鮮やかな花は焦土と化していた。 袁術は驚いて振り返った。至る所で天を衝く火焔が吹…

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生41

「易幟」(国旗を変えること) 五更(午前四時から六時)、女官が帷の外で柔らかな声で水時計の時刻を告げた。外の空の色は深く濃く、銅の灯りの覆いは外され、動く光りの光線はだんだんと明るくなっていた。女官の跪く姿の影が細長く引き延ばされ、壁にゆらゆら…

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生40

「議兵」 袁術は榻椅子に端座し清い風が吹き、池には温い水気があり、空の色はいよいよ遅くなり、複雑な緑の葉が重なり暗い影を落としていた。深く重い墨がかった青色が沈んでいて、花の香気もいよいよ濃くなる。 彼の袖の中にはあの玉璽が隠されていた。時…

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生39

「懐璧」 袁術は中庭で、目を閉じて静養していた。榻椅子のもとには二人の侍女が跪いていた。やや遠くには二人の刀を持った兵士がいた。 刺客事件の後、彼はやることにかなり注意深くなっていた。 孫策は中庭に入ってきたとき、とくに少し重々しく歩いてきた…

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生38

「天火」 孫氏の部将が勝つと、両岸の歓声は雷のようである。その他の船は橋の下でそれぞれ揺れていた。あるものが船頭上の孫策に向かって挨拶した。すると、岸壁の方へこぎ始める、接岸の用意をした。 船上の兵士達が次々と水中に飛び込むと、孫策は船頭に…

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生37

「竟渡」(競艇) 袁術は病と称し、端午の競艇に、袁耀を先に行かせた。文臣武将が二列となって後に続き、水辺で天地龍神を祭った。 これは民間の祭りで、大きな式典ではない。主催者が不在なので、着るものもいささか適当であった。祭祀が終わると、袁耀はい…

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生36

「尋仙」*この章は難解でした。 医官は袁術の脈を触れて笑って言った。 「袁公ご安心ください。何でもありません。ただ今は昔とは違います。夏に入れば、天気は甚だ暑くなります。熱毒は少し気が塞がり憂鬱なことがあります。いささかだるさを免れません。…

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生35

「加冠」 周瑜は目を閉じて、しばらく考えた。 「わたしはもちろん同意しないことはないよ。でもわたしは年長者じゃないし、徳もないし……」 孫策は周瑜の話を遮った。 「それに拘る必要はない」 二人は指を絡め合った。手のひらには汗が滲み湿ってきた。 「…

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生34

「何夕」(特別な夜) 彼ら二人が俯いて囁きあっていても、誰もなにも気にしなかった。 それはその瞬間、人々が帷の入口から入ってきたその女子を振り返ってみていたからだった。 彼女は二十歳前で、身のこなしはしなやかで、柔らかな薄絹を身にまとい髪には鮮…

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生33

「修禊」(三月三日の水辺での邪気払い) 春の水辺、大きな錦織の幕が張り巡らされていた。赤や緑の着物の女達が集まり、笑い声が絶えなかった。 周瑜は壺で水を掬い、侍従のもつ銅盆に注いだ。またその中に蘭草(フジバカマ、香草)を浸した。その花はとても小…

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生32

「上元」 袁術は出かけるとき最も前後に従者を無数守り囲まれるのを好む。 さらに刺客の事件からそれほど経っていなくて、警護の衛兵はまた一層厳しくなった。群臣と提灯を観賞するといっても身近な文武の腹心数人である。他の者は城頭で少し見物して、簡単…

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生31

「裳裳」(衣服) 孫策が内室に入ったとき、袁術はうたた寝から醒めておらず、しかし侍女達は察しがよく、彼を阻んだりはしなかった。 彼は静かに寝台の前に立った。袁術のまぶたがぴくぴくと動いていて安穏と寝ているようではなかった。 彼は袖の中であの銀の…

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生30

「重帘」(重ねた帳) 室内には重々しく安神香のの香が立ちこめていた。孫権はまぶたが重く、何度か誰かが呼ぶ声がしたが、どこかわからぬ深い井戸から伝わるようで、遠くもなく近くもなく曖昧模糊としていた。それからしっかりとした手が彼の肩に触れて、寝台…

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生29

「銀刀」 袁術は水中で指を洗い流し、五指をまた広げた。透明な魚たちが指の間を泳いでいた。軽く声を上げて笑う。 「策児も年を越したら二十歳だ、喪も明ける。わたしが叔父となって自ら加冠と字をつけてやろう、また容貌の優れたお嬢さんを探して、結婚さ…

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生28

「拝月」 袁術は濁った熱を吐き出し、ひとしきり孫策の顔に触れていた。再び室内の水蒸気がもうもうとたちこめる。 彼は孫策の乱れた髪の一条を捻った。柔らかで黒々とした湿った髪からは水滴が零れ落ち、指に沿って流れ落ちる。 「あしたには朝雲となり、暮…

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生27

「同心」 孫策が行ってから間もなく、あるものが孫権を呼びに来た。左将軍が孫家の二公子を招いていると。 孫権は眠れなくて、心の中ではおかしいと思い、何事か尋ねたが、来たものは説明しようとせず、ただ公子が左将軍にお目にかかれば自然とわかるという…

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生26

「万全」 袁術は若いとき武芸を習っていた。四世三公の家で、子弟の教育はしっかりなされなければならない。君子の六芸は、みな習熟していなければならない。騎射の道も狩りや遊興で欠かせないひとつである。彼はそれにも十分熱心で学問だって良くやった。 …

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生25

「水精」 室内は水蒸気が充満していた。湿り気があり、暖かい。しばし立っていたが、服が皮膚に張り付き、呼吸もさらに重苦しくなった。 袁術は軽く咳払いした。 「孫校尉はついに戻ってくる気になったのかな?」 孫策は水中で身体を斜めにしていた。あるか…

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生24

「白玉」 その侍者は孫策を袁術の屋敷に連れてきて、ある道を指し示した。 「校尉が長く寿春を不在にしていた間に、将軍府は尊い位に合わせて、また大きく土木工事をいたしました。もし案内するものがおりませんでしたら、途中で迷うことになるやもしれませ…

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生23

「騏驥」駿馬 孫策は少し驚いた。 「なるほど彼か。太傅は……今はどうなのだ?」 孫権は目の光りがまた暗く沈んだ。 「おそらく良くないと思う」 馬日磾は袁術に無理やりに引き留められ、長年のつかえが病となっていた。冬になり、さらに一日と悪くなっている…

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生22

「帰期」 孫権はこの頃酷く眠れない。他人の邪魔になるのもいやで、毎日寝台で灯りをつけ、真夜中まで読書していた。疲れて竹簡を抱いたままようやく眠ることもあった。 彼の精神は落ち着かず、今夜は本をいくらも読めなかった。木簡を寝台に広げて、一人で…

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生21

「驟雨」 孫策の馬は西域の良種で、馬高が高く脚も長い。雪白のたてがみに露の珠のような光りを放ち、着地して葉を踏むときには音もなく、とても柔らかい。 彼は軽装で出かけた。馬は素速く、瞬く間に従うものたちの殆どを振り払った。遠くから見ても、人影…

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生20

「盧江」 陸議は長いこと楼上に立ち続けていた。眼はぼんやりとしてちかちかとしてきた。彼はよろめき、額を城壁の女墻(凸凹)の上に近づけた。きつい陽射しから少しでも守られるように、わずかな冷たさを求めた。 痩せこけた手が彼の肩を抑えた。彼は振り向…

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生19

「懐橘」 あるものが殿上にやってきて、袁術の耳元に小声で何事か囁いた。すぐに大喜びして満面笑顔になった。 「戻ったのか?」 報告した侍者が答えた。 「はい。すぐにいらっしゃいます」 陸康はその顔色を見て取り、我が子と甥と一緒に立ち上がり、袁術に…

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生18

「奪節」*馬日磾の権威の印であった節(飾り房の着いた杖)を袁術が奪い、勝手に官職を決め始めた。 孫策は部屋の中で一人静かに座り、精神修養をしていた。 目の前には碁盤が置かれ、ほんのわずかな黒と白の石があり、その他は手許にあった。 時刻はもう早く…

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生17

「秘議」 孫策は枕の上に伏せていた。寝台の側で水の音がした。誰かが絹布をお湯で絞り、肩から腰まで彼の背をゆっくりと拭いていた。一通り拭くと、またきれいな乾いた布で水分を拭き取っていた。 その手には薄いタコがあり、彼の背を揉んでいった。やり方…

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生16

「主権」 孫策は寝台に凭れて座り、白綸子の中衣ははだけて、胸元が起伏する様が見えた。 彼の手はしっかりと帳を握り締め、手には青筋が立っていた。 袁術は寝台の足側に座り、その時を待ち、愛でていた。 彼の目線は孫策のこめかみのしたたる汗を見つめた…

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生15

「夜談」 馬日磾は普通の儒学者ではない。 彼のような出身、そのような経歴、今いる立場、当然普通のものではない。 普通ではないゆえに、彼は煩瑣な儀式礼節にこだわらなかった。 使用人が言う。 「孫郎はもう休みました」 馬太傅は答える。 「知らせに行け…

(術策)「有花堪折直須折」by潜規則之路先生14

「金鈴」 翟とは雉のことである。 袁術の衣の上には鮮やかな雉の尾の紋様が刺繍されており、ほの暗い灯火の下でもきらきらと光っていた。 袁家は四世三公といえど、彼は一地方に割拠していても、ずっと人からは家族の恩恵でと見られることが多かった。今回の…